小野小町の美容食
歴史に輝く絶世の美女は、小野小町だが、その前に、兄と弟の2人の天皇から愛された、額田王(ぬかたのおおきみ)という美女の話から進めていきたい。
額田王の有名な和歌が、『あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き 野守(のもり)は見ずや 君が袖振る』。歌の意味は「紫草の生える野を行く私に、そんなに手を振っては、野原の番人が見てますよ」といったところ。この歌を詠んだ額田王は、まず天武天皇と結婚するが、兄の天智天皇と再婚。この歌は別れた夫と再会したときに詠んだ恋の歌。2人の天皇に愛された額田王って美人で魅力的な女性だったのだろう。
この紫野行き、とは野草狩りのこと。額田王の万葉時代は、若菜摘みが大ブームで、摘んだばかりの若菜はその場で煮て食べる習わしがあった。
「野草の若菜の苦味成分は、老化を防ぐ抗酸化成分のポリフェノールやカロテンなどのビタミン類、それにミネラルなどが中心ですから、若返り効果が期待できます。きっともっともっと美しくなりたいと祈りながら、食べていたのでしょう」
若菜の中でも、永山先生のイチオシは、ヨメナとヨモギ。
●ヨメナ…野原の美容食といってもいいほど美肌効果の高いカロテンやビタミンB群、C、Eがたっぷり。
「私も食べたことがあります。早春に出てきた若芽を10センチ程度取り、熱湯でゆでて水にさらし、スープの具、天ぷら、あえ物、おひたしにして食べます」。葉が成長してしまうと美味しくないので、若菜のうちに摘むこと。
●ヨモギ…草餅を作ったりするのがヨモギ。
「春の野草の中でも最高の不老長寿食です。江戸時代の書物にも『あらゆる病邪を防いで、長患いの人を病床から起こす』とあり、自然治癒力や免疫力強化に役立ちます」
成分的にはビタミンCやE、カロテンなどが多く、抗酸化作用や免疫力の強化に美容効果もある。鮮やかな緑色の葉は、血液サラサラ効果が。苦味の成分は、心臓を丈夫にしたり、脳の老化防止にも役立つと言われている。
ちょっと難しい表現ですが明眸皓歯(めいぼうこうし)とは、美人を形容する言葉で、瞳がぱっちりしていて、歯が白く美しいこと。
今風に言うなら、“眼力”があるということでしょうか。その目元ぱっちり成分が、ハマグリやタコなどに多い、タウリンというアミノ酸の一種。
日本を代表する美人に、平安時代の小野小町がいますが、好んで食べたのが、ハマグリ、カニ、アワビ、ウナギなどで、いずれもタウリンやコラーゲンが豊富に含まれている。
タウリンが眼力を高め、コラーゲンが肌の若さ、美しさを保っていたのだろう。そして、噛むことも美人になるためには大切。ハマグリやタコはよく噛むことで、うまみが増してくる。小町はきっと歯も丈夫だったはず。
よく噛むことは歯根の若さを保つにはとても重要で、虫歯も予防にもなる。小野小町に負けないくらいの明眸皓歯を目指そう!
小野小町には有名な和歌がある。
『花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに』。意味は「花の色も私の美しさも、もはや消え失せてしまいました。ぼんやりしている間に、花が散っていくように」といったところだろう。
どんなに美しい女性にも、老衰の現実を自覚するときがくる。あのころああしておけばよかった、こうしておけばよかったと嘆いても、もう遅い。美人であるがゆえに、その落差を実感しているのかと想像すると、ちょっと切なくなってくる。