最後のインスタ投稿
あっぱれな旅立ち

「インスタグラムに最後の投稿をしたときというのは人工呼吸器をはずしICU(集中治療室)から出る決断をしたあと。本人もご家族も、もうあまり長くないかもしれないことを認識していたようです」(友人)

 ICUを出ると決めたのは、ゑみさん自身。

「人工呼吸器をつけている姿を息子に見せたくなかったんです。もし余命が長くないのであれば、たくさんの愛情とありがとうをご家族にも、彼女を応援してくれる方々にも伝えて旅立ちたいと願ったのだと思います」(友人)

最愛の息子と。「入院中、家族の団結力やサポート力がすごくて、何があっても息子は大丈夫だなと心強く思った」と生前のゑみさんは語っていたという(インスタグラムより)

 病院関係者も家族もその強い意思を尊重。ゑみさんはお別れの前に、最後の力をふりしぼった。

「ラストはSNSでみんなに笑顔を届けなきゃって思ったと思うんですよ。だからICUにいるのに、ご家族にメイクボックスを持ってきてって頼んだそうです。私たちもそのメイクボックスを見たんですけど、工具箱ほどの大きさ。メイクボックスをICUに持ち込んだ人は、彼女が最初で最後だと思いますよ(笑)」(友人)

 メイクボックスだけではない。ICUにパソコンとスマホを持ち込み、管につながれながら、作業を続けた。病院でも「あんなに意思が強く、思いやりを持った末期がん患者は見たことがない」と話題になっていたという。

 SNSを更新し、さらに家族、友人に笑顔で旅立ちのあいさつをしたゑみさんは、3月28日に逝去。自分の生き方の美学を貫き、最後の最後まで自分の思うとおりに行動して死んでいったのは見事、というしかない。

 ゑみさんからのメッセージをご紹介しよう。

《健康なみなさんへ。『最善を期待し、最悪に備えよ』という言葉を送ります。定期的にがん検診に行ってください。行って損はないです。がん保険にも入ってください。むやみに病気を恐れなくていいです。でも、頭の隅に入れておいてくださいね。笑顔でね。わたしはずっとみなさんを応援しています》

高木ゑみさん
2021年3月28日逝去。享年35。
※生前のゑみさんの言葉を聞きたいという方は、YouTube「高木ゑみ」をご覧ください。YouTubeで得られた収益は、生前ゑみさんが望んでいたように、がん患者をサポートするための寄付に使用いたします。

《取材・文/吉川亜香子》

週刊女性2021年4月27日号掲載)