ストレスやイライラがたまりがち。生きてるだけで疲れるというあなたは「反応しすぎ」なのかも?人気僧侶が仏教の教えから導く、コロナ禍時代の心のレッスン。
イライラは心が『反応』することで生まれる
「コロナ禍で在宅勤務が始まってから、夫は昼も夜も毎日家で食事をします。だけど、食べ終わった食器は食卓にほったらかしで、会話どころか、ごちそうさまさえなし。夫との長い老後生活を垣間見てしまったようで、うんざりしてしまって……」
こう話すのは、長年専業主婦を続ける50代半ばの大沢綾子さん(仮名)。夫の在宅時間が多くなると、大沢さんのように、ついイライラしたり、ストレスを感じたりする人も多いだろう。
「他人と一緒に生活する以上、それはしかたのないことと思っているかもしれませんが、そんなことはありません。というのもイライラやストレスは心が『反応』することで生まれているからです」と話すのは僧侶で著述家としても活躍する草薙龍瞬(くさなぎりゅうしゅん)和尚。
私たちの日常は「心の反応」でつくられているといってもいいくらい、いつも何かに反応している。例えば、夫の言動にイライラしたら、それは怒りを生む反応をしたといえるし、義父母のひと言にマイナスの想像をしたら、それは不安を生む反応だ。
そういった、しなくていい「ムダな反応」をやめればストレスやイライラが減ってラクになるはず、というのが多くの悩み相談を受けている草薙和尚の考えだ。
とはいえ、自分の心がどれだけムダに反応しているか、なかなか自分自身ではわからないもの。そこで、簡単にセルフチェックできるリストがあるので、まずはいくつ当てはまるか、試してみてほしい。3つ以上当てはまったら、あなたの心はムダに反応しているかもしれない。
■心の「反応度」セルフチェックシート
□相手に文句ばかり言ってしまう。
□人と比べては落ち込んでしまう。
□人の噂話が大好きだ。
□SNSの反響が気になってしかたない。
□ご近所の目を常に気にしてしまう。
□不安な考えが堂々めぐりしてしまう。
□家族が家にいることが増え、気が休まらない。
・1~2つ…心が反応し、プチストレスを抱えています。放置は危険です。
・3~5つ…心が日常的に反応して疲れています。
・6~7つ…心が反応で満ちています。疲れがピークで、すぐに対処したい状態です。
ムダな反応の代表選手は「妄想」
ストレスやイライラを生み出す「ムダな反応」。そのもっとも代表的なものが妄想だという。
「人は、暇さえあれば常に妄想しています。あの人が悪い、この先不安だらけだ、など、何かを根拠なく思い込んだり、決めつけたりし続けています」(草薙和尚、以下同)
たしかに、あの人にどう思われているだろうかとか、どれだけ考えても確かめようのないことをぐるぐると頭の中で考えてしまうことは誰にでもあるだろう。
そういった妄想から自由になり、イライラやストレスが減るのなら「ムダな反応」をやめたいところだが、「ムダに反応しない」とは具体的にどういうことなのかがわかる草薙和尚のエピソードをひとつ紹介したい。
数年前、草薙和尚がある公園でホームレス向けの炊き出しを手伝っていたときのこと。ヤクザ風の男が酒を飲んで暴れだし、炊き出しの鍋のそばで「こんなもんひっくりかえしたる!」とわめきはじめたという。男が大声で「偽善じゃろうが」とわめき散らすなか、草薙和尚は男へ不快な感情が湧かないよう、なるべく反応しないようにしながら、「偽善かもしれんなあ」と穏やかに男に接し続け、男が何に怒っているのか、理解しようと努めた。
やがて警官が到着し、男を連行していくとき、男は長年刑務所に入っている母親に手紙を書きたいが、文字が書けないので手紙を出せないのだと言った。その日の夜、草薙和尚は警察署から戻った男と一緒に手紙を書き、いろいろな話をした。男とは今も友人でいるそうだ。
「もしあのとき私が、暴れていることへの怒りの感情で男に対応したり、相手を危険な男に違いない、話をする余地など絶対ないと妄想によって判断し、否定したりしていたら、きっと、男は心を開かず、もしかしたらいまだに母親に手紙を出せないでいたかもしれません。
よしあしをムダに判断せず、自分だけが正しいと思い込まずに、まずは相手を理解しようとする。つい反応してしまいそうになる状況こそ、反応しないことが大切なのです」
こうしたムダな心の反応を避ける技術はほんのひと工夫で、誰でも簡単に日々の生活に取り入れることができるという。そのもっとも敷居の低い方法を聞いた。