齋藤さんお気に入りのハンバーガー自販機は、2台のうち1台のみ稼働中

修理できるがレトロさは失われたまま

 ただし、新しくパーツを作れたとしても、経年劣化や黄ばみなど、レトロ自販機ならではの“時間の味わい”までは再現できない。

「もともと、ウチにくる自販機はほとんど壊れているような状態。それをどこまで本来の形を保ったままで動くように修理できるか、自分の手で1台1台に時間をかけて蘇(よみがえ)らせていくのが難しさでもあり、楽しさでもあります。そうやって大切にしてきたものだからこそ、たとえ一部だとしても新しいパーツに替えざるをえないのは少し寂しいですね」

 今回被害に遭ったハンバーガー自販機は、パネルにコックのおじいさんが描かれ、見た目もかわいらしい1台。「中古タイヤ市場 相模原店」で1位2位を争う人気を誇るが、齋藤さん自身にとっても思い入れのある自販機だった。

「子どものころ、家の近所にあったハンバーガー自販機がこれと同じもので、よく親しんでいた味だったんです。使わなくなって保管していた業者さんから譲ってもらい、なんとか復活させることができました」

 今はもともとこのハンバーガーを作っていたメーカーが存在しないため、中身の商品は海老名市の食品会社に特注で作ってもらえるよう交渉した。どこか懐かしい見た目の外箱もオリジナルデザインだという、並々ならぬこだわりだ。

「食品会社さんは“コストもかかるし、そんなに売れないんじゃないか”と渋りぎみでしたが、そこをなんとかお願いしますと、無理を通して作ってもらいましたね。実際に売り出し始めると、その人気に驚いていたみたいです。今ではチーズやテリヤキ、エビカツ、チキンカツなど、ハンバーガーの種類も増えました

エビカツバーガー。「チープな味わいがまたいいでしょ」と齋藤さん

 注文ボタンを押すと、機械上部に冷蔵保存されている箱入りハンバーガーが自販機内部の電子レンジ部分に落下し、「加熱中」のランプが点灯。60秒ほどでアツアツのハンバーガーが取り出し口から出てくるという仕組みになっている。箱の中には直径6cmくらいのやや小ぶりなハンバーガーが入っており、週末などには200個ほどが売れる看板商品だ。値段はいずれも280円。もともと同型の機械が2台あったが、現在は被害に遭っていない1台のみが稼働中だ。