働く人のランチ、親子のレジャースポットに
また、うどんやそば、ラーメンが調理されて出てくる麺類自販機も人気だ。現在は富士電機製と川崎製鉄製の2種類の機械が稼働しており、外観はもちろん、機械内部の湯切りの方法などにも違いがあるという。湯切りの過程で具材や麺が容器からはみ出ることもあるが、そこもレトロ自販機ならではの“ご愛嬌”。プラスチックの容器にスープが並々と注がれたダイナミックな一杯を楽しめる。機械による湯切りの天ぷらうどん、天ぷらそば、きつねうどん、ラーメンは各300円、チャーシューメンは400円。また、川崎製鉄製の麺類自販機を転用した「お茶漬け自販機」で鮭茶漬けを楽しめるのも、世界でここだけだ。
自販機の近くでラーメンを食べていた、近隣の工場に勤務する田辺裕也さん(仮名)に話を聞いてみたところ、「忙しい日はよくここでうどんやそばを食べています。安いし普通においしくて、手軽に昼食をとれるのがいいですね。仕事の休憩がてら、後輩と一緒に来たりすることもあります」と答えてくれた。近所の人の憩いの場にもなっているようだ。
ここでしか見られないかき氷の自販機も齋藤さんオススメの1台だ。味はイチゴ、メロン、レモンの3種類で各150円。注文ボタンを押すと、取り出し口にカップが落ちてきて、一度シロップが注がれる。ガリガリと氷を削る豪快な音とともに、かき氷がカップに山盛りに降り注がれていき、最後にもう一度シロップがかけられて完成。その一連の動きがなんともユニークで楽しい。
この日、親子で遊びにきたという貝瀬すみれちゃん(4歳)も、このかき氷の大ファンだ。お母さんの貝瀬千影さんは「家にもかき氷器があるのに“ここの自販機のかき氷じゃないとヤダ”って聞かなくて、スーパーに買い物に行く途中に立ち寄りました。機械から自動で出てくるのが面白いみたいです」と話す。親子連れの家族にも人気のスポットなのだ。
ほかにも、焼きおにぎりや焼きそばなどのホットスナックやアイスクリームにはじまり、今ではほとんど見かけない乾電池や使い捨てカメラの自販機など、数々の貴重な自販機がまるで博物館のように所狭しと並んでいる。古いタバコの自販機にはシガレット型のお菓子が陳列され、おでんやカレーなどの缶詰、全国のご当地ドリンク、さらにはプラモデルやおもちゃまで、自販機に並ぶ商品のセレクトにも遊び心が満載だ。
「それぞれの自販機の特徴に合わせて、“こんな商品が入ってたら面白いんじゃないか”とスタッフとも相談しながら、そのときどきで品ぞろえを替えています。多種多様な商品が並ぶため、どうしても売り切れのままになってしまうことも多いですが、その場限りの出会いを楽しんでもらえるとうれしいです」