敷地内には博物館級の貴重な自販機ばかり

始まりはタイヤ交換の時間つぶし

 この「レトロ自販機の聖地」が生まれたのは、2017年。今では自販機コーナー専属のスタッフも雇い、齋藤さん自らも本業の傍ら、商品の補充作業に大忙しだ。さまざまなメディアやYouTubeなどでも頻繁に取り上げられ、遠方からもレトロ自販機ファンが足を運ぶ。

「もともとは、店先でタイヤの交換作業を待つお客さんへのサービスのために自販機コーナーを開設しました。そのときはこんなに大きくするつもりはなかったんです。ただ、昔から趣味で自販機を集めていたこともあり、修理が完了したものは実際に稼働させたくなってしまって、台数がどんどん増えていきましたね

 レトロ自販機の魅力をたくさんの人に知ってほしいとの思いもあり、齋藤さんが築き上げた一大聖地。お客さんが増えるほど、一部にはマナーの悪い人も出てきてしまい、そんななかで今回の自販機破壊事件も起こってしまった。

「壊した人への怒りはもちろんありますが、使い方の注意書きや古い自販機を扱う際のマナーをしっかりお客さんに伝えられていれば、こんな事件は起きなかったかもしれないと後悔もしています。一度壊れてしまうと修理をするのが難しいので、コインが詰まらないように1枚1枚ゆっくりと入れたり、ボタンをやさしく押したりなど、ていねいに扱ってもらえるように、こちらもこれまで以上にしっかりとお客さんに伝えていかなければと思っています」

 30年以上活躍してきた希少な自販機の数々は、筐体(きょうたい)を眺めているだけでも楽しい。コンビニやインターネットショッピングでなんでも買える時代に、レトロな自動販売機でモノを買うという体験は、それ自体が貴重なものかもしれない。古い機械である以上、故障や不具合が多くなってしまうのは仕方がないが、齋藤さんは「お年寄りをいたわるように、広い心でやさしく扱ってほしいです。不具合があれば、叩いたりせずにすぐに管理者に連絡をしてほしい」と語った。

(取材・文/吉信 武)

「中古タイヤ市場 相模原店」
神奈川県相模原市南区下溝2661-1
電話:042-714-5333
営業時間:10:00〜18:00(中古タイヤ市場)
※自販機コーナーは24時間営業