その教えとは、こんな内容でした。
【今できる最高最善の行動をとりなさい】
【For me ではなくFor you。自分ではなく、相手の立場になって考え、行動しなさい】
その言葉を思い出し、少し冷静になったMさん。
いったい、「今の自分にできる最高最善の行動は何か?」「誰のために、何をするべきか?」を考えました。
出てきた答えは「情報の共有」。
Mさんは、すぐさま社長に連絡を入れました。
自分が遅れるという連絡ではありません。
今日の自分と同じように車で高速を使って会場に向かう可能性が高い社長へ、事故渋滞が発生しているという情報を伝えるための連絡です。
社長にとっては慣れた道ですから、もしかしたらカーナビもセットしていないかもしれない。
もし、社長がこの渋滞に巻き込まれたら、セミナーの主役が会場入りできなくなってしまう! セミナーに参加する人たちのためにも、それだけは防がなければ!
今の時間ならまだ、社長は家を出ていないはずだと考えたMさんは、最善の行動として、社長へ「事故、通行止め」の情報を伝えることを選択したのです。
「災い」を「福」に変える考え方って?
社長への連絡を終えたMさん。
次の「今できる最高最善の行動」を考え、「会場入りしてからやろうと思っていたプレゼンの最終的な準備」のうち、車内でできるものをできる限り進めたのでした。
そして、こう考えました。
「今日、私がこの渋滞につかまったのは、もしかしたら、社長がこの渋滞につかまらないようにするために、神様が仕組んでくれたのかもしれない」
そう考えれば、今日に限って体調が悪くなり、いつもは使わないタクシーを使ったことも納得できるのではないか……と。
このときのMさんの考え方こそ、「災いを福に変える考え方」ではないでしょうか。
この考え方ができれば、どんなトラブルにあっても前向きにとらえられるようになります。
事実、Mさんは、「自分の判断ミスですみません」と恐縮する運転手に対して、まったく別の話を切り出して、笑いながら雑談をすることができたのだとか。
そのときMさんは、トラブルに対して、そんなふうに前向きに考えることができた自分に驚いたそうです。
社長秘書になる前の自分なら、渋滞にイライラするだけだったはず。
その自分の成長ぶりを誇らしく思い、感動したといいます。
こういう瞬間が、「自分の成長を実感できた瞬間」なのかもしれません。
(文/西沢泰生)