就職1年目に、丸1か月の有休を選択

 かつて私は、学生時代からずっと憧れていたクイズ番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』の後楽園(のちに東京ドーム)予選を、就職1年目の夏に突破しました。

 ご存知ない方のために説明すると、「ウルトラクイズ」は、かつて日本テレビ系で年に1回放送されていたもので、国内予選を突破した一般参加者をアメリカ大陸へ連れて行き、現地でクイズをやるという大型スペシャル番組。

 アメリカ大陸を移動しながらの撮影ですから、参加者は、番組に出ている期間、会社や大学を休まなければなりません。そしてそれは、もし決勝まで勝ち抜くと、丸々1か月かかってしまうという長丁場。

 学生時代に突破できればよかったのに、よりによって私は、社会人として勤め始めてから数か月というタイミングで、国内の第一予選を突破してしまったのでした。

 はたして、会社に1か月のお休みを申請して、成田空港での第二次予選に参加するべきか? 辞退するべきか?

 そもそも、入社1年目の新卒社員が、いきなり会社を1か月もお休みするなんて、狂気の沙汰ではないのか?

 正直、悩みました。

 なにしろ、残酷なことに、第二次予選(通常は空港での1対1のジャンケン。私が参加した第10回のときは腕相撲でした)に負けて敗退すると、1か月のお休みを申請したにもかかわらず、次の日(つまり月曜日)から会社に出社できてしまうのです……。

 そのときに、私は、この警戒音の理論にたどり着きました。

 社会人1年生としては、常識的には、参加すべきではないとはわかっています。でも、「チャレンジしたい」という、ワクワクを抑えることができなかった

 つまり、当時の私の頭の中で、けたたましく鳴り響いていた警戒音は、「警戒音2」だったというわけです。

 悩んだ末、私は新卒社員に与えられていた有給休暇をすべて申請し、休日出勤の代休もつぎ込んで、会社に1か月のお休みを申請して番組に参加しました。

 そして、会社の同じ係の人には、「途中で負けて帰国したら、翌日から出勤します」と言って有給休暇に突入。

 結果は、決勝のニューヨークまで進んで、有給休暇と代休をすべて使い切り、欠勤3日のおまけつき。

 しかし、いまだに、そのときの決断は間違っていなかったという確信があります。

心のワクワクに従えば、後悔しない

 あのとき、もし、「警戒音2」……つまり、「社会人として参加してはいけない」と思う反面、どうしても消えない「ワクワク感」を無視して、ウルトラクイズに参加していなかったら、どうなっていたか?

 たぶん、今も後悔し続けていたでしょう。

 そして、おそらく本を出すこともできなかったと思います。

 なぜなら、私のデビュー本、『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム刊)はクイズ形式の本で、もし、私に「ウルトラクイズ準優勝者」という肩書がなければ、出版社の企画会議を通らなかったと思うからです。

 1冊目の企画が通らなければ、今、本の執筆を生業にすることもなかったはず。

「警戒音2」……つまり、「やるのは怖いけれど、なんとなくワクワクする……だからやる!」を選んだことは、私の人生を変えてくれたというわけです。

 尻込みしたときは、自分の頭の中に響いている警戒音が、警戒音1なのか、警戒音2なのかを見極めてください。

 そうすれば、「あのときに、やっておけば……」と、一生、後悔しなくてすみます。

(文/西沢泰生)