いつからだろうか。
コンビニで弁当を購入したとき、やけに高級感ある割り箸をつけてもらえるようになったのは。
もはや割り箸と呼ぶには申し訳ないくらい使いやすく、割るのに失敗して片方だけ短くなることはまずない。うっかり途中で折ってしまい、サイズ違いの箸を使うはめになった経験は誰にでもあるはず。あの悔しさというか、食べにくさにイラ立つシーンはほぼなくなった。
レジで店員から、
「お箸はおつけしますか?」
と尋ねられると、「はい」と即答したくなるできばえのよさ。それがいまどきの割り箸のスタンダードになりつつある。
週5回以上はコンビニ弁当を食べているという東京都の30代男性会社員はこう話す。
「昼休み時間が限られているので外食するゆとりがない。コンビニ弁当でささっとすませることが多いほか、晩ご飯も仕事帰りにコンビニで買って自宅でひとり寂しく食べていますよ。割り箸の好みですか? 私のお気に入りは最初から割れているタイプですね。割る必要がないのでラクですから」
そうなのだ。最近の割り箸は進化を遂げており、消費者が割らなくてすむように、最初から独立した2本組が箸袋にパッケージされたタイプが出てきている。割らないのだから失敗しないに決まっている。
ローソンとファミリーマートは割らない“割り箸”
コンビニ大手3社では、ローソンとファミリーマートがこのタイプを採用。なぜ、割らない割り箸に変更したのか。
最初に切り替えたのはローソンだった。
「現在の割り箸は2016年6月から全国で採用しております。材質は竹です。長さ200ミリ、太さ5.5ミリと、ほかのコンビニや弁当店で使われている一般的なサイズです。重さは個体差があるため設定していません。割り箸は、割るときに斜めに割れる場合があるので、最初から2本の箸としました」(ローソンの広報担当者)
ローソンでは、以前は木製の箸を採用していたこともあったというが、「成長も早く、環境への影響度が木製より小さい竹製に変更しました」(同担当者)という。
現行タイプに変更して以降、
「木製の箸で多かったささくれなどのお問い合わせが減りました」(同担当者)
と消費者には好評のようだ。
続いて割らないタイプに変更したのはファミリーマート。約2年前のことだった。
「2019年夏ごろに全国で切り替えております。それまで木製だったのを竹製に変更し、サイズは長さ200ミリ、太さ5.5ミリです。切り替えた理由としては、お客さまや加盟店から、以前の木製の箸の際に“うまく割れず、ささくれができて使いづらい”との声をいただいており、小さいお子さまをはじめ幅広いお客さまに安全にお使いいただくために最初から割れているタイプに変更しました」(ファミリーマートの広報担当者)
変更後に寄せられた声としては、
「“割る手間がなくなった”“開けてすぐ使える”“小さな子どもに安心して使える”といったおおむねよい反応をいただいております」(同担当者)
というから改良は成功したようだ。
セブン-イレブンが“天削タイプ”にした理由
この“割れているタイプ”に変更していないセブン-イレブンにはどのような意図があるのか。同店の割り箸は、割る線の溝がくっきりしており全体的に高級感が漂う。失敗せずに割りやすいタイプといえるだろう。
「現行の割り箸は2006年ごろから採用しております。竹を使用し、“天削(てんそげ)タイプ”に変更しました。お客さまからは特に割り箸の形状についてのお問い合わせはございません」(セブン―イレブンの広報担当者)
“天削タイプ”とは、箸の先とは逆の「天(頭)」部分が斜めに削られているかたち。ローソンとファミリーマートは持ち手部分にカドのない丸い箸であるのに対し、カドのある箸となっている。最初から割れているタイプに変更する予定はないのだろうか。
「見た目の高級感に加え、割りやすさにこだわって成型しており、変更は予定しておりません。お車の中で召し上がられるお客さまなどのお箸が転がってしまわないように、現状の天削タイプを採用しております」(同担当者)
また、箸袋についても「お使いになるお客さまが利便性を感じていただけるように改善しました」と開けやすくしているという。
ひと昔前に比べたら、ローソンもファミリーマートも力を入れずとも開けやすい箸袋になっている。
前出のローソンの広報担当者は、箸袋について「SDGsの観点から、プラスチックの使用量削減を目的に昨年12月より極限まで薄くしており、環境に配慮しています」と回答。まだまだコンビニの割り箸は進化しそうだ。
言うまでもないが、割り箸は商品そのものではない。しかし、弁当などを購入した消費者ができるだけ快適に食事できるよう、環境にも配慮しながら3社とも工夫を凝らしていることがわかった。
ちなみにローソンとファミリーマートの箸の「天」部分にはナゾの二重線が入っている。どのような意図をはらんでいるのか尋ねたところ、両者とも「飾りです」とのことだった。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する。ウェブ版の『週刊女性PRIME』『fumufumu news』でも記事を担当