2000円×3作品を240万円で購入した人物

 彼が出展したのは世界最大手の取引所『OpenSea(オープンシー)』。ここでの取引は仮想通貨の『イーサリアム』で行われる。1イーサリアムは約49万円(11/29現在)というレートで、Zombie Zoo Keeperくんは最初の3点をそれぞれ0・006イーサリアム、当時のレートで約2000円の値付けをした。

 『OpenSea』に出展する以前、彼は、自分のお小遣いを増やすため、アイロンビーズで作った作品をメルカリで売ったこともあった。そこではまったく売れなかったというが、NFTの作品は約2週間で売れた。

初めて出展した時に買ってくれたひとりが、アメリカの人気シンガー、ケイティ・ペリーのライブにも同行したこともある有名なDJ、トレバーさんだったんです。彼は、クリプトアート(※編集部注:NFTを活用したデジタルアートのこと)とカルチャーの巨大コミュニティを運営もしていて、NFT界隈(かいわい)でもとても影響力がある人でした。彼が自分のツイッターのアイコンに息子の絵を使ってくれて、世界に知れ渡るようになりました。流行や常識をまったく無視したピュアさに惹(ひ)かれたと言ってくれました」(絵美さん)

 それがきっかけで、Zombie Zoo Keeperくんの作品の価格は上がり続ける。それを決定的にしたのが、

日本でも有名なDJ、スティーブ・アオキさんが2次流通で3作品を240万円で購入してくれたんです」(絵美さん)

 2次流通とは出展者から購入した作品が、購入者によって転売されること。この段階で約6000円で売り出したものに40倍の価値がついたことになる。彼の絵は無料のドット絵を描けるアプリを使い、1作品に描ける時間は5~15分程度だという。その絵がこれだけのお金を動かしているというのだから驚きだ。

 現在も作品をアップし続けていて彼の『OpenSea』のページには203点のアートが並ぶ。そしてこれまでの取引合計は87・3イーサリアム。日本円で約4200万円(11/29現在)にも及ぶ。

『OpenSea』のZombie Zoo Keeperくんのページ。アイテム数が203、取引高は87・3(2021年11月29日現在)

 もちろんZombie Zoo Keeperくんに、この販売額すべてが入ってくるわけではない。一定の割合を手数料として受け取るのだ。その額はアメリカの大学4年間ぶんくらいの学費にはなったという。

「ピコ太郎さんがジャスティン・ビーバーに拡散されて世界的にブレイクした状況と、ちょっと似ているなと思っています。私もアーティストなので思うのですが、息子には“アーティストって才能だけでは食べていけない。運に恵まれているかが本当に大事なんだよ”と話しています」(絵美さん)

草野絵美さんのインスタグラムより