NFTはバブルなのか、それともクリエイターの夢なのか

 NFTの取引が、これほどまでにアツくなっている状況を、前出の森井教授は次のように分析する。

デジタルの作品にこれだけの値段が付くということは、NFTによってそのデータがオリジナルだということが証明されているからです。ただ、今回話題になった小学生の作品が、芸術的に非常に高いものかとなると……。

 一種の投機なんですよ。誰かがきっかけを作り、今回は有名人が彼の絵を購入したということですが、そのことで高騰し、お金がそこに集まってきているんです

 何かのきっかけで巨額なお金が動く。絵美さんも「日本でNFTをやっている子どもが少ない、ツイッターで画像をつけて発信してもらえたなど、あらゆる要素が重なった奇跡」と、息子の置かれている状況を話す。いったい、このNFTを取り巻く環境はどうなっていくのだろう。

「仮想通貨の価値と一緒です。急に値上がりしたり、暴落したり。デジタルアートも仮想通貨も実体があるものではなく、単なる“データ”なんです。みんなが価値が上がるだろうと思うから買っているというだけで、ある日、あれは価値がないよね、と思い始めたらいきなり無価値になります。今回のNFTも、今は火がついて高騰していますけど、収まってくればたぶん、暴落するでしょうね」(森井教授)

 ある意味バブルの状態で、いつはじけてもおかしくないのかもしれない。だが、絵美さんはアーティストの立場から、NFTにこんな期待をしているという。

今までデジタルアーティストというものは、コピーをされまくってお金が還元されることはありませんでした。でも、NFTによって、クリエーターが作り出した“本物”がわかるようになった。

 デジタルデータにそういった付加価値がつき、ちゃんと市場として動き出してほしいなと。今は手数料が高いものもあり、高額取引ばかり注目されますが、ツイッターのプロフィール機能に実装されたり、TikTokやインスタの投稿動画を売れる機能も実装されるなどの仕組みが普及すれば、間違いなくカジュアルなものも増えていく。

 少数の熱量の高いファンさえいれば、クリエーターが創作だけで生計を立てられる環境になっていくのかな、と期待しています

(取材・文/蒔田稔)