流行っているように見えるのが悔しい
“駄菓子店”自体が減っているわけではない。
「新しい形態の駄菓子店が広まっています。昭和スタイルのような従来の自宅での駄菓子店ではなく、ほかの業種と兼業するさまざまなタイプの駄菓子店が誕生しているんです」(土橋さん、以下同)
例えば、文房具店やハンドメイドショップなど別の業種の店舗の一角や、学童クラブや老人ホームで販売したり、移動販売をする駄菓子店もある。
「駄菓子店文化の灯火(ともしび)は消えてはいません。ですが、文化を残すためには駄菓子店だけでなく、駄菓子メーカーと問屋を守る必要があります」
駄菓子メーカーがなくなれば、問屋も商品を仕入れることができずに廃業してしまう。
「“●●がなくなる”とSNSなどで拡散されると買い占めが起きてしまう。駄菓子も駄菓子店も限りがあります」
問屋であるあらいさんは、ブームの実感はないと言う。
「いわゆる昔ながらの駄菓子店が減っているので売り上げも減っています。それに、来店するお客さまみんなが商品を買うとは限りません」
問屋業の傍ら駄菓子店も営むあらいさん。買う人は1人なのに数人がついてくる。休日はお客がひっきりなし、休む暇もなく、経営は厳しい。
「コンビニ感覚で“懐かしい”と言って何も買わずに帰る人や見学だけの人に弱ってしまいます。ガム1個でも購入してもらえれば……」
あらいさんは肩を落とす。周囲から見れば流行(はや)っているように見えるのも悔しいという。
「来てくれるのはうれしいんですが、声をかけても無視する人や、トイレだけ借りて帰る人も……」
あらいさんら店主は、そのジレンマに悩まされている。