18歳でホストクラブデビュー。スタバに行く感覚だった

──高校生のころから歌舞伎町に通い、ホストクラブにも出入りするようになったとのことですが、そもそも、ホストクラブに行こうと思ったきっかけは何でしたか?

「15歳から歌舞伎町にいたので、“とりあえず行ってみよう”と思ったのが最初。18歳になったらホストクラブに入店できるっていう認識もあって、その流れで行ったんです」

──主に誰と行きますか?

「最近はひとりで行くことが多いです。2年前くらいは、Twitterで知り合った歌舞伎町の友達と行ったりしましたね」

──まったく面識のない人と一緒に行くのですか?

「ツイートを見ていて、自分と似たような感じの子と、スタバ感覚でホストに行っていました。“とりま、ホスクラ集合で”みたいな。高いスタバでしたね(笑)。でも、相判(※)をやっている子と一緒に行くと、気を遣ったりするんです」
【※ 店に指名するホストがいる女性同士が2人以上でホストクラブなどに行くこと】

──例えば、どういうトラブルが起きるのでしょうか。

「“あなたはホストにディズニーランドに連れて行ってもらっているのに、私は連れて行ってもらっていない”とか。あと、お金の話もシビア。“こっちは50、60万円使ってきた”って言われたりすると、関係が悪くなるんです」

──お店には、現金を用意して行くのですか。

「現金ですね。ホストクラブって、クレジットカードだとプラス20%かかるんですよ」

──ええ!

「絶対、現金のほうがいいですよ。でも初回って、1000円や3000円で遊べるので、そんなにかからないんですよね。2回目以降は、好きなホストがいるから会いに行くけれど、店の接客自体は1ミリも楽しくなかったりもするんです。“なんでこんなことに払っているんだ”って言いながらも、1万円払って会いに行ったりしていました

──ホストクラブに通うようになって、金銭感覚が変わったりしませんでしたか?

「普段のお金の使い方は、そこまで派手ではないです。例えば、オタク気質の人がカメラとか服などの趣味に使う感覚と一緒なんですよ。

 それと、歌舞伎町も毎日行っていたわけではなくて、放課後は友だちと遊んだりして、たまに勉強で疲れたときとかに、ひとりで行っていました。ビジコンの準備や“〇〇学校のチワワちゃん”でいることに疲れているときに、歌舞伎町に行くと“お姉さん”って呼ばれるんです。肩書が何でもいいところが、居心地がよかった。非日常的な逃げ場として使っていました

──それだけお聞きすると、普通の高校生のような生活とはかけ離れて聞こえますが。

「普通でしたよ。渋谷や原宿にも行っていました。基本はアニメイトとセガにいたんですけど(笑)。歌舞伎町では遊ぶって言っても、ただ歩いているだけで楽しかったんです」

──歌舞伎町がほかの街と違った部分はどういうところでしたか?

「普段、その辺に人が倒れていても、なかなか声をかけないじゃないですか。でも歌舞伎町だったら、“お姉さん大丈夫?”って誰かがすかさず声をかけて、水をあげたりするんです。共感して優しくできる部分があるんです」

──ホストクラブで高額を使うことへ抵抗はありますか?

「最近思うのは、何か欲しいときに、お金が理由で諦めたくないなって。ただ、ホストも“好きだったらいくらでも使う”とかではなくて、その人にそれだけの価値があるか、考えたりするんです。例えば、1回の会計が10万円だったら、好きの気持ちに対して5万円使って、2万円は楽しかったから。でも、3万円は煽(あお)られて払ったから余計だったな、とか」

──お店で過ごした時間や待遇にお金を払っているという考えなのですね。

「ホストクラブって、3万円で“本当に最悪”ってときと、30万円かかっても“よかった、楽しかった”っていうときと、毎回、満足度が違うんです。値段が決まっていないからこそ、その場その場で払う感覚が楽しいっていうのも、ホストクラブの魅力かもしれないですね」

──お金がなくなったら(自分の)価値がなくなる、という不安は生まれませんでしたか。

「精神的にホストに依存していた時期はありました。ホストから“何しているの?”って聞かれたら、“俺のためにお金、用意しているの? ”っていう意味なのかなって、自分の中で変換してしまったり……」

──歌舞伎町やホストクラブが怖くなったりしませんでしたか?

「ある女の子が、恐怖と常に戦っているのを見たんです。そのときに、結局お金でつながれた関係は不安定で、お金を使っているからこそ、目に見えない関係値って大事だなと思いましたもし自分が指名しているホストが、100%嘘で接してきているとしたら人間不信になりそうです(笑)。そういう意味では怖いかも……

──確かに、ある程度の信頼関係は欲しいですよね。

「お金って誰でも使えるから、うまくいけば成りあがれるけれど、つまりは、いつでも追い抜かれるんです。この世界を見てきて、“普段の生活が充実していなくて、ホストにしかお金をかけていない状態”だったら、彼からの評価ひとつで自分の自己肯定感や自尊心が揺らいでしまうなって思いましたね」

「光と闇が混在するのが歌舞伎町ですね」と佐々木さん 撮影:齋藤周造
◇    ◇    ◇

 今回は、佐々木チワワさんの幼少期から、歌舞伎町にどっぷりハマるまでのエピソードの数々、そして歌舞伎町で学んだことまでを語ってもらった。次回は、実際に歌舞伎町の社会学を研究するなかでわかった歌舞伎町の特性や、衝撃的だったホストクラブの世界について、じっくりお聞きする。
 


《PROFILE》
佐々木チワワ ◎2000年生まれ、東京都出身。小学校から高校までを都内の一貫校で過ごす。現在、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに在学しつつ、「歌舞伎町の社会学」を研究中。著書に『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)がある。Twitterは@chiwawa_sasaki

『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします