“どん底時代”を乗り越え、でんぱ組.incに追い風が

──2010年にはTOKYO IDOL FESTIVAL(女性アイドルグループを中心としたフェス)が始まり、ご当地アイドルを含め、数多くのアイドルグループが誕生してブームが起きていましたよね。

「はい。私たちにとってターニングポイントになったと実感しているのが、賞レース系のライブ(2012年2月開催『第1回アイドル横丁杯!!』)に出演したこと。お客さんの投票で順位が決まるのですが、そこで優勝したら、BABY METALや°C-uteが出演していた『第2回アイドル横丁祭!! 生バンドスペシャル』という、SHIBUYA-AXで行われるライブに参加することができたんです。

 それまでは、メンバーの夢が美術をやりたい、声優になりたい、アニソンを歌いたいって、みんなバラバラだったけれど、初めて“優勝するぞ”という共通の目標ができたんです。最終的に向かう先が同じになっているなっていう感覚が芽生えました

──無事、勝ち上がって出演されたライブでは、盛り上がりましたか?

“出演できなかったみなさんの気持ちを背負って歌います”って言って、まず『でんぱれーどJAPAN』を歌ったんです。この曲は、今ではライブの定番曲だけれど、その当時はまったく受け入れてもらえなくて。“なんだこの曲は……”っていうリアクションでした。『Future Diver』(ライブではファンとの掛け合いコールもあり、盛り上がる)という曲も、流れて喜んでくれたのはファンの人だけでしたね。でも、そのライブで、“グループを続けられるな”って確信したんです。なんだか流れが変わったなって思えました

ツインテールにこのポーズがよく似合う。萌え〜!! 撮影:山田智絵

──メンバーそれぞれ違うタイプが集まっているところも、でんぱ組.incの魅力だと思いますが、タイプが異なるからこそ大変だったことはありましたか?

「逆に、6人組時代(2012年~2017年)のでんぱ組.incって、全員オタクだからこその、いいパワーの出し方ができていたなって思うんです。守備範囲の違うオタクが何人もいた。好きなものを押しつけず、それぞれ楽しむから、仲よしこよしグループじゃない。そんなことよりも、“野生のプロ”が集まって、個々の趣味やパワーを持ち寄って発揮したのが、でんぱ組.incその形がいいなって思っていました

メンバーは「戦友」。在籍したことが誇りになるグループに

──アイドルグループによっては、コンサート終わりなどに、メンバー同士の仲のよさをうかがわせるバックステージからの画像をアップしたりしますが、でんぱ組.incはそういう雰囲気ではないですよね。

「ないですね。打ち上げとかも、やらないですからね。最初の武道館公演(2014年5月6日)をやったときも、全員、直帰しましたね。あれだけみんな“武道館ライブが目標”って言っていたのに、終わったら、“じゃあ”って(笑)。あっさりしているんです

──(笑)。バックステージでアイドルが泣いている姿などを見るのも、ファン心理としては好きなのですが……。

「アイドルは泣きがちですからね(笑)。でんぱ組.inc特有のこの関係を、何て言葉で表せばいいのかなって思って使っていたのが、“戦友”だったんです。趣味や個性は違うけれど、同じ戦いを挑んでいる。この表現が、いちばんしっくりくる気がします」

──ファンの間では“なれ合い”と言いますか、メンバー同士の仲がよさそうな光景を見たいと言う声もありそうですが。

「ファンの方からしたら、もっと見せてくれっていうのもあるかもしれないけれど、これには私の根っからの人づきあいの悪さも影響しているというか(笑)。みんなでいる現場でも、ひとりでご飯に行ったりしていましたからね。でも、それが嫌な感じに映らないグループっていうか。誰も無理に、自分のほうに引き込まない。オタク同士にとって優しいグループなんですよ

──ほどよい距離感がいいのかもしれないですね。ここ数年は、コロナ禍の影響もあってアイドルグループの活動休止や、解散なども多いですが、でんぱ組.incはメンバーが変わっても続いていますね。

「もちろん“解散しよう”っていう話は、でんぱ組.incの歴史上でも何度か出てきた。終わらせることもできたんですけれど、そのたびに“でんぱは、まだまだいけるんじゃないか”っていう気持ちになって。最近だと、2020年の11月にメンバーのひとりが卒業を発表して、5人になりそうな時期があったんですけれど、もふくちゃんに“新メンバーを入れたほうがいいよ”って言って、結果的に5人、加入することになったんです

──未鈴さんは、でんぱ組.incでの活動をどうとらえていますか?

「卒業していった子たちにとって、“元でんぱ組.incだった”ということが恥ずかしくないグループでありたいです。そのキャリアが誇りになってくれたらいいなって思う。辞めるっていう決断は勇気がいることですし、また次の夢に向かって進めるのってカッコいいから、私は卒業に対してネガティブなイメージがないんです。でんぱ組.incを踏み台にして、好きなことをやっていける。そういうグループでもいいんじゃないかなって、個人的には思っています」

グループを大切にしていることが、ひしひしと伝わってきた 撮影:山田智絵
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「メンバーの入れ替わりなど、変化によって離れてしまうファンはいるけれど、変化に対してマイナスなイメージは持っていない」そう語る古川さん。第2弾では、アイドルとして進化し続ける彼女に、ライブで自身の結婚を発表し、ファンを驚かせた真相についてなどを詳しくお聞きします。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
古川未鈴(ふるかわ・みりん) ◎香川県出身、165センチ、A型。『でんぱ組.inc』のセンターを務める。キャッチフレーズは「歌って踊れるゲーマーアイドル」。コンシューマーからアーケード、ネットゲームまで幅広く網羅し、ゲーム番組のMCもこなす。新体操やクラッシックバレエの経験を生かしたダンスも得意。イメージカラーは「赤」。
Twitter→@FurukawaMirin、Instagram→furukawamirin、ブログ→「みりんのメモ帳.txt」

【INFORMARION】
でんぱ組.inc Zeppツアー2022 『お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!』
一般チケット、各種プレイガイドにて発売中!

▼イベント日程
2022年4月22日(金):福岡・Zepp Fukuoka
2022年5月7日(土):札幌・Zepp Sapporo
2022年6月11日(土):東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
2022年6月14日(火):名古屋・Zepp Nagoya
2022年7月8日(金):大阪・Zepp Namba

▼詳細はこちら
https://dempagumi.tokyo/news/2022/01/10/2022_zepptour/