辞めるときが来ても、卒業式はやりたくない。その真意とは

──ご自身の中では、結婚でアイドルを辞めようと言う選択肢はなかったのでしょうか。

私は、一生アイドルしかやらないつもりだったので、辞めるっていう選択肢はなかったです。もちろん、いいタイミングで、きれいな卒業式をやって辞めるのもいいと思う。自分の頭の片隅で、“あのときに卒業しておけば、違う人生だったんだろうな”っていう思いもあるし、そういう悩みがゼロだとはいえないんです。でも、卒業はめちゃくちゃ覚悟がいる。私はこれまで、その覚悟がなかっただけとも言えるかも……」

──ファンからしたら、推しがアイドル活動を続けていてくれて、うれしいと思いますよ。

「でも私、辞めるときにも、卒業式はしたくないんですよ」

──ええっ! それはなぜですか。

「辞める人のために、そこまでしてくれなくてもいいよ、みたいな(笑)。もし辞めるのだったら、元SMAPの中居正広さんみたいに、個室で配信して“今日、辞めるんだよ”っていう。正直、あれが理想に近いんじゃないかなって思っています

──それだと、ファンの方も寂しいのではないかと思いますよ。

「でもなんか、自分の卒業式に関しては、最小限の人が見てくれればいいっていう気持ち。“自分のお葬式は小さくていいよ”みたいな気分ってあるじゃないですか(笑)。それに近いかもしれないですね

“卒業式いらないかも宣言”には、スタッフもびっくり! 撮影:山田智絵

女性が苦手だったのに、結婚したら同性の友人も増えたワケ

──結婚されて、変わったと思う部分ってありますか?

「結婚して実感したんですけれど、女性ファンからの応援が増えたんです。“私も子育てしています”、“妊活中です”とか。自分のところに、そういう声が届くようになった。なかには、“出産をへて、アイドルとして頑張っている姿を見て元気が出ます”っていう言葉もあって、その言葉に私のほうが元気をもらっています。応援してくれている人たちの声で、私ももっと頑張らなきゃ、と思えるんです

──その姿勢が、アイドルですよね。

「本当に、今のほうが、アイドルとしての真の目的は“人を元気づける”ということなんだ、と実感していますね」

──子育ては、時に孤独ですよね。

「今は夜泣きとか大変です。子育て中は、身近な人や憧れている人が同じ経験をしていると思うと、めちゃくちゃ元気になれるなって思って。勝手に仲間みたいな気持ちになるんです。私もブログなどを見てくれているファンの方のために、ママになっても奇麗でいたいと思って、骨盤矯正とかも頑張っているんですよ」

──結婚や出産前は、あまり女性ファンを意識していなかったのですか?

「もともと、いじめられていたので、女性が苦手だった部分もあります。“女性って裏があるしな……みたいな(笑)。ゲーマーの男性と話すほうが気が楽で、友だちも男の子のほうが多くて。でも結婚、出産をへて、私生活でも女性の友達が増えたんですよ

妊娠と出産を経験し、見える世界がさらに広がったようだ 撮影:山田智絵

──それはよかったですね。女性の友人が増えたのは、どうしてだと思いますか?

「私はアイドルなので、自分の私生活の話は基本しないんですよ。でも今は、結婚も出産も公にしているので、周囲に多少はパートナーや子どもの話もするようになったんです。それが同性と仲よくなるきっかけになったのかなと思います

──結婚や出産という経験で、未鈴さん自身も変わっていったのですね。

いや~、共有できる人がいてくれることが、いかに大事かって感じましたね。でも私は今、ママ友っていう存在はいないんですよ。私の中のママ友の定義って、私のことを古川未鈴って知らずに関われる人。でも、“〇〇くんのママ”って呼ばれる関係性の人が今はまだいない。だから今後の課題は、ママ友ができるかどうか。どうやって作ればいいのか考えたりしますね

──未鈴さんがアイドルだということに、気づく人は気づきますからね。

「そうなんですよ。“お仕事、何やっていますか”って聞かれたらどうしようって悩んでいます。“ダンサーです”にしようかな、みたいな。一応、外れてはないな、って(笑)」

凛とした母の顔も、おちゃめな一面も見せてくれた 撮影:山田智絵
◇    ◇    ◇

 結婚してもなお、「一生、アイドルとして生きていきたい」という未鈴さん。そんな未鈴さんが出産を経験して気づいた大切なもの、新たに芽生えた思いとは……? 最終章となる第3弾では、未鈴さんが毎日奮闘している育児について、語っていただきます。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
古川未鈴(ふるかわ・みりん) ◎香川県出身、165センチ、A型。『でんぱ組.inc』のセンターを務める。キャッチフレーズは「歌って踊れるゲーマーアイドル」。コンシューマーからアーケード、ネットゲームまで幅広く網羅し、ゲーム番組のMCもこなす。新体操やクラッシックバレエの経験を生かしたダンスも得意。イメージカラーは「赤」。
Twitter→@FurukawaMirin、Instagram→furukawamirin、ブログ→「みりんのメモ帳.txt」

【INFORMARION】
でんぱ組.inc Zeppツアー2022 『お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!』
一般チケット、各種プレイガイドにて発売中!

▼イベント日程
2022年4月22日(金):福岡・Zepp Fukuoka
2022年5月7日(土):札幌・Zepp Sapporo
2022年6月11日(土):東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
2022年6月14日(火):名古屋・Zepp Nagoya
2022年7月8日(金):大阪・Zepp Namba

▼詳細はこちら
https://dempagumi.tokyo/news/2022/01/10/2022_zepptour/