自宅の衣裳部屋には500着。総額1000万円以上!
──ロリータファッションをしていることで、最初は周りの反応が気になったりしましたか?
「最初は、親からも“そんな格好で外に行くのか”って言われたりしました。特に、家からの道は、近所の人に会ったりするかもしれないのでドキドキしました」
──ロリータファッションをしている人がいたら、確かにチラ見してしまいますね。
「最近、電車の中ではみなさんスマホを見ているから視線は気にならないのですが、スマホからふっと顔を上げたとき、だいたい目が合います。そして、みんな目を見開くっていう(笑)。酔っぱらいにも絡まれたりするんですよ」
──着ている服だけで、そんな目にも遭ってしまうのですね。
「やっぱりまだ、ロリータファッションは一般的なイメージがよくない。本当は、自分のアイデンティティの部分はあまり語りたくはなかったんですが、看護師という部分を入れて発信していかないと、ロリータのイメージも上がっていかないなって思ったんです」
──ちなみに、ロリータ服は何着くらいお持ちですか?
「500着は持っていますね。1着あたり3万円するものが500着なので、1000万円以上は使っていると思います」
──1000万円ですか!?
「田舎だったら、マンションも買えなくはないかな(笑)。家には服用のお部屋があります。ロリータファッションって、1着ではなく一式。ひとコーデ用に、上から下までそろえてパニエも買わなきゃいけない。高価な趣味なんです」
年齢を公表した理由は?「自分らしく生きる」ということ
《こういうDM本当沢山くるのょー メンタル強くならんと好きを貫い生きていけない ちなみに私は38歳ですが》(青木美沙子さんのTwitterから引用)
──美沙子さんは、38歳という年齢を公表されています。ロリータファッションに理解がない人から非難される可能性もある中、どうして年齢の公表を決めたのですか?
「『セブンルール』(フジテレビ系)という密着番組に出演したときに、“年齢を出してほしい”って言われたんですよね。そのときは33、34歳という微妙な年齢だったので、表向きには年齢は非公表にしていたんです。年齢を出すことによって、“ばばあって言われたらどうしよう”とか、“みんなが引いちゃうだろうな”って思ったので迷いました。でも結局、はっきりと年齢を言ったことで、共感の声が上がったんです」
──例えば、どのような反響がありましたか?
「“私も同年代だけれどロリータファッションをしています”、“応援しています”というような好意的な意見がほとんどでした。自分がコンプレックスだと思っていた年齢を言ったことによって、逆によかったんだって気づいて、自分のパーソナルな部分を恐れずに出していこうって思えました」
──女性は結婚や出産というライフイベントのタイムリミットを言われることが多いですよね。
「ロリータファッションも、フリルやレースがついているので“若い子が着るもの”という風潮があるんです。私のところにも、“ロリータババア”という中傷や、“モデルの賞味期限切れ”というような言葉が届くこともあります。でも、“何歳になろうが、ピンクやフリルを着たりしても別にいいじゃん”って思います。年相応のファッションというものは特にないって思っているし、そういう価値観は変わっていってほしい」
──心の中では好きを貫きたいと思っていても、周りの圧力に耐えられないという人も多そうですよね。
「私は、世の中の“普通”に反するとしても好みの服を着ていたいし、自分らしく過ごしていきたい。誰かが決めた年相応のファッションではなく、好きなファッションを貫く。好きなように生きたほうががいいって思っています」
ロリータファッションを通して、自分にあった働き方や価値観の多様性を発信している青木美沙子さん。穏やかな語り口のなかには、凛とした強さが感じられました。インタビュー第2弾では、美沙子さんがマッチングアプリで遭遇した、男性からのロリータファッションへの根強い偏見などについて語っていただきました。
(取材・文/池守りぜね)
【PROFILE】
青木美沙子(あおき・みさこ) ◎正看護師兼ロリータファッションモデル。日本ロリータ協会の会長でもあり、2009年には外務省から「カワイイ大使」として任命され、これまでに25か国45都市以上を訪問。Twitterのフォロワー数は約8万8000人、中国におけるSNS総フォロワー数は100万人を超える。ロリータファッションブックの発売や、数々のアパレルブランドとコラボしたプロデュース業も行っている。
・オフィシャルブログ→https://lineblog.me/aokimisako/
・公式Twitter→@aokimisako