チロルチョコのパッケージデザインに心を打たれた
──チロルチョコに関心をいだいたのはいつですか。
「2010年です。私は幼い頃からレシピや手芸など写真がたくさん載っている本がめちゃめちゃ好きで、図書館へ行っては、そういったビジュアルが多めの本を読み漁る子どもでした。そんな私を見た母が図書館で『チロルチョコ official book』(ワニブックス)を借りてきてくれたんです」
──正方形の判型で、装丁自体がチロルチョコっぽくて、かわいい本ですね。
「この本には、これまで発売されたチロルチョコがずらっと載っていて、1つ1つの見た目のかわいさにハマッたんです。“うわー! いろんな絵柄がある。楽しい!”と思って、夢中で読みふけりました」
──はじめはパッケージデザインに惹かれたのですね。
「そうなんです。そしてこの本を読んだあと母とスーパーマーケットへ行ったら、偶然、お菓子売り場に『カステラチロル』という商品が売られていたんです。遠くからでも目にとまりました。だって、チロルが光っていたから。私には本当にそのチロルが輝いて見えたんです」
──おお! かぐや姫がいた竹みたいな。
「そして近づいて実際に手に取って見ると、パッケージデザインがもうかわいくて、かわいくて。自分の好みとドンピシャでした。大げさではなく、その時チロルに心を打たれたんです。そしてすぐさま、“お母さん、買って!”とねだりました」
──出合うべくして出合ったソウルメイトのようですね。
「運命の出合いでした。あの日のことは忘れられない。そして食べたらしっかり、おいしかったんです。“チョコに本当にカステラが入ってるー!”って感動しました。チロルチョコのパッケージやグッズを集め始めたきっかけにもなった味ですね」
──芸術系の大学へ進学したのは、チロルチョコのパッケージデザインの影響ですか。
「そうです。もともとモノを作るのは好きでした。パッケージデザインに心ときめく日々を過ごすうちに、自分もそんな風に、デザインで誰かをワクワクさせられるようなりたいと思いました」
カレーパン味、明太子味……味へのチャレンジ精神に感動
──2010年以降、12年間でチロルチョコを約700種類も食べたそうですが、味は覚えていますか。
「はい。およそ700種類、すべての味を覚えています。1つ1つ、時間をかけて味わいながら食べますから。忘れないように、じっくりと。だから味だけではなく、いつどこで買ったのかもほとんど覚えているんです。お店で見つけてテンションが上がって、家に帰って食べて幸せな気持ちになったその思い出のすべてがチロルだから」
──特においしかったチロルチョコはなんですか。
「全部おいしいのですが、味だけではなくパッケージも最高なのは台湾スイーツシリーズの『レモンケーキ』です。レモンチョコのなかにザクザクのケーキ生地とレモンピールが入っていて、とっても爽やかなお味。めちゃめちゃおいしくて、目の前がぱあっと明るくなりました。同じ台湾スイーツの『マンゴーかき氷』とともに、とにかくパッケージもかわいい。ぜひ復刻してほしいですね」
──「かき氷」をチョコレートで表現するなんて、なかなかの挑戦ですよね。
「そうなんです。チロルは味へのチャレンジ精神がすごい。そして、ひねっているようで、ちゃんとまっとうに“おいしい”のがすてきなんです。食べるエンタメというか、絶対に満足させてくれる。だから新商品が出るたびに狂喜乱舞。気持ちがブチあがります」
──チャレンジ精神を感じた商品は、他にどのようなものがありますか。
「カレーパンでしょうね。カレー味のチョコレートではないのです。あくまで“カレーパン味”なんです。“カレーパンがチョコレートになったら楽しいのに”って誰しも一度は夢見た経験があるじゃないですか。でもそれを本当に実現するなんて。普通はさすがにできないと思いますよね。けれどもチロルは私たちの夢を叶え続けてくれている。それがリスペクトできるところです」
──カレーパン味のチロルチョコ……おいしいんですか。
「おいしいですよ。スパイシーな風味がして、パン粉が入っていて、カレーパンの外側のカリッと揚がったあの皮の部分もしっかり再現していて。“やってくれたなー!”って感心してしまいました。参りましたね」
──カレーパン味のチョコレートを発想するセンスがすごいし、実現する技術力の高さに驚かされますね。
「そうですよね。チャレンジングチロル(※)ですと、他には『ゆず胡椒』『ブルーチーズ』などが酸味もしっかり再現されていてびっくりしました。これだけチャレンジングな商品でもちゃんとおいしく仕上げてやるっていうパッションが素晴らしい。泣けてきますよね。あと、辛子明太子を使う福岡銘菓『めんべい』とのコラボチョコが発想も味も、ともに絶品でした」
※チャレンジングチロル……既成概念にとらわれない発想のチロルチョコ。称賛の気持ちを込めて彼女はそう呼ぶ。
──辛子明太子のチョコ……おっしゃるようにパッションは感じます。けれども、さすがにチョコレートと魚卵は合わないのでは。
「いいえ、いいえ、合うんですよこれが。チョコレートのなかから海鮮の香りがふわっとして、すてきな時間でしたね。チロルの味をつくる担当の社員さん、きっと神の舌を持っているんだろうな」
──明太子とチョコをマッチングするテクニックがあるなら、チロル化できない食べ物はないのではないかとすら思えますね。「こんなチロルチョコがあったらいいのに」と考えた経験はありますか。
「いつも考えています。特に“絶対にヒットするよ”と思ったのがビーフシチューです。ビーフシチューってチョコ化したらきっとおもしろいはず。でもある日、テレビでチロルの特集があって、没ネタのラインナップにすでにビーフシチューが入っていたんです。“ああ、没になっちゃっていたのか……”って。自分がいいなと思うアイデアは、とっくにチロルの社員さんが考えていらっしゃるんですよね。私はまだまだ甘いな」