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生き方

わが子をなじり馬乗りで首を絞める「毒親」から逃げた女性が語る、実父の仕打ちと現行制度の“大きな問題”

SNSでの感想
※写真はイメージです
目次
  • 周囲からは「いい親でしょ」と言われ理解が得られない
  • 馬乗りで首を絞められるも、助けを求められない日々
  • 18歳以上の毒親に悩む人々を苦しめる“福祉の空白”

「毒親って聞くと、“命に関わるようなひどい虐待をしている”というイメージがありますが、すべての毒親がそれに当てはまるわけではないんです。そのことを知ってほしいし、今まさに毒親に苦しんでいる方の力になればいいなと思います」

 そう語るのは、「毒親の力を借りずに大学を卒業した」という旨のツイートが21万いいねを超え、当時のエピソードを振り返って投稿サイトにつづったエッセイが反響を呼んだ、ゆきこさんです。

 思春期のころに母が家を出て父子家庭で育ち、周囲への人当たりはいいが家の中では暴言や暴行を繰り返す父親から、妹とともに暴力をふるわれる日々を送っていたといいます。

 虐待の報告数が増加の一途をたどっている現代。2019年度は表面化した事態の通報だけでも19万件に及び、水面下では潜在的な虐待がさらに多いと考えられています。今や社会問題とも言える「毒親」という存在に苦しめられ続けたゆきこさんに、悪夢の日々から脱却するまでを伺いました。

ゆきこさん。毒親から逃れたあとは、金銭的な苦労はありつつも、楽しい日々を過ごせているそう 写真:本人提供

周囲からは「いい親でしょ」と言われ理解が得られない

 外遊びよりも家で遊ぶことが好きで、4歳からはピアノを習い始め、本をよく読む文学少女だったというゆきこさん。

 衣食住は保証され、習いごともしていて親の世間体はいい。「だからこそ、周りの人や自分自身すらも、異常だと気づけない側面がある」と、ゆきこさんは言います。

「毒親って聞くと、子どもを命の危険にさらしたり、衣食住も与えないみたいな、ひどい虐待をする親だというイメージがあると思うんですけど、私のように、そのあたりは担保されつつも家のなかでは暴言や暴力をふるわれるっていうケースもあります。この場合の毒親は、周囲からは"いい親でしょ”と言われてしまって、理解してもらえないのが問題です」(ゆきこさん、以下同)

 子どもだから知識が乏しく、どこに助けを求めればいいのかわからない。児童相談所に相談しても、即座に命に関わる問題ではないぶん相手にしてもらえず、周囲からの理解も得られずに孤立してしまう危険性が高いということを、ゆきこさんは繰り返し主張していました。

馬乗りで首を絞められるも、助けを求められない日々

「私の父親は仕事ができ、世間体も非常によかったものの家では横暴で、食事の味つけひとつで、母親に対して怒鳴ったり暴力をふるったりすることが日常茶飯事でした」

 母親が父親の言動によって精神的に病んでしまい、次第に衰弱していく様子を幼いころから間近で見ている中で、ゆきこさんは父親の異常性に、だんだんと気づいていきます。

 ゆきこさんが中学生のころ、「このままでは、あなたたちを殺して私も死んでしまうから」と、父親に耐えられなくなった母親が家を出ていきました。

 この事態に父親は怒り心頭で、ゆきこさんと妹への態度がさらに悪化していったといいます。

「ビンタだったり、数時間、正座させられたりなどがよくありました。また、2日に1度は機嫌が悪くなるし、“誰のおかげで生活できてると思ってるんだ”、“母親はおまえらを捨てたんだ”というのが口ぐせで、常に言われ続けていました。父に対しては、そもそも何を言っても通じないという感じでしたね」

 父親の言動に反抗すると、さらに激昂し態度が悪化。最終的には馬乗りになり、首を絞められたといいます。しかも、それは完全に力を入れているわけではなく、手加減をしている状態だったそうで、ゆきこさんは、なおさら追い詰められました。

「思いっきり絞められて気絶して病院に運ばれたり、跡が残るくらい強くやられていたら、警察にも行けたと思います。けれど、そこまでの力は入れられず跡が残らないぶん、周囲には信じてもらえないんですよね」

 さらに、外部に悟られないよう、殴られるときも見えるところにはあざを作らないようにされるなど、ゆきこさんたちが助けを求められない期間は10年以上続きました。

中学時代のゆきこさん。外では明るく振る舞っていても、家に帰ると憂うつな毎日だった 写真:本人提供
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