誰もが毒親になってしまう可能性がある
ゆきこさんはSNSやエッセイなどを通して毒親に苦しむ人へ向けた発言をしていますが、それと同時に「誰もが毒親になってしまう可能性」も指摘しています。
毒親をテーマにした卒業論文を書くために資料を調べる際、ゆきこさんは、アメリカのセラピストで毒親に関する書籍を多数、執筆しているスーザン・フォワードに着目しました。
スーザン・フォワードは、毒親を以下の4パターンに分けて定義しています。
●子どもが従わないと罰を与え続ける「神様」のような親
●「あなたのため」と言いながら子どもを支配する親
●大人の役を子どもに押しつける無責任な親
●脈絡のない怒りを爆発させるアル中の親
スーザンはそう定義づけたうえで、「親がよかれと思ってやったことでも、子どもがストレスに感じていたのであれば、その行為は子どもにとっては毒になってしまうので、親の意思は関係ない」とし、「(親よりも)子どもがどう感じるかが重要だ」と結論づけています。
つまり、親のエゴが積み重なると、やがて毒親になる可能性があるということです。
「毒親によって与えられた苦しみは大人になっても続くという意味で、“呪縛”という言葉を使ってエッセイを書きました。痛めつけられた子どもの心は、年を重ねても癒やされない一生ものの傷を負うので、呪いという言葉がぴったりではないかと。“自分も知らないうちに子どもを傷つけていないか”を意識できる大人が増えることが重要だと感じています」
毒親サバイバーは、家を出てからが人生のスタート
2022年現在の法律上、親子の縁を完全に切ることは不可能であり、できる対応といえば「戸籍の分籍」のみとなっています。
そのため、ゆきこさん自身も父親との縁を完全には切れていないのが現状です。実家を出て、自分で稼いだお金で生活しているとはいえ、毒親との闘いは、いまだに続いています。
それでも虐待に負けずに生き延び、成人を迎えた「毒親サバイバー」として、現在進行形で毒親に苦しむ人びとへのメッセージを伺いました。
「毒親の問題は、家を出てからが本当のスタートです。私も当初は毎日のように(父親から受けた暴行などの)フラッシュバックが続いたし、本当に苦しい毎日でした。ですが、親がいないからこそできることって、いくらでもあると思います。ぜひ諦めずに病院や機関などを頼って、命をつないで、人生を自分の手で勝ち取っていってほしいです」
今回の取材を通して「毒親」の存在は、決してレアケースではなく、気づかないうちに誰もがなってしまうこともあるのだなということが理解できました。
「私はこんなに子どものことを思っているのに」
そんな思いも、長年の心の傷を残す毒となって、子どもを苦しめる呪いなのかもしれません。
ゆきこさんは取材中に、
「どこかに絶対助けてくれる人はいるはず」「“どうせ助からないから”と思わず、希望を捨てずに勇気をもってSOSを出してほしい」
と、毒親へ苦しむ方へのエールを数多く発言していました。
ひと筋縄ではないかない、根の深い問題だと感じますが、少しでも現状がよくなることを願ってやみません。
(取材・文/翌檜佑哉)
【参考文献】
◎『毒になる親』(毎日新聞出版刊/スーザン・フォワード著/玉置悟訳)
◎『わたし、虐待サバイバー』(ブックマン社刊/羽馬千恵著)
【INFORMATION】
◎ゆきこさんTwitter→https://twitter.com/kkym_yukiko
◎ゆきこさんnote→https://note.com/fujitoko