“しょーもない”ものを、長生きをして作り続けたい

──今回の作品に限らずですが、塚本監督が作品を作るにあたり、心がけていることは何ですか?

題材にもよりますが、希望がある作品にしたいと考えています。もちろん“全く救いようのない(悲しい)話を作ってくれ”という依頼があったら作りますが、たとえ血みどろな作品でも、最後は気持ちよく終わりたいというのはあります。最後まで落ち込んだまま終わりたくはないです

──塚本監督の作品は、『今日も嫌がらせ弁当』('19年)といい、ポジティブでクスッと笑える作品が多いですよね。実は、世界の“おバカ映画”マニアで、「Z級映画」の名付け親でもあるのだとか。監督は過去のインタビュー記事で、「100歳を超えても“しょーもない”と言われる映画・ドラマを撮り続けたい」とおっしゃっていますが、そこにある思いはなんでしょうか。

ポルトガルの巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が100歳を超えても映画を撮っていたのですが、僕の場合はそういったアート系作品ではなく、“しょーもない”ものを、長生きをしてひたすら作り続けたい。それであれば、普通の僕でも“死ぬ気でやれば”できるかなって

──hideさんの「死ぬ気でやれよ、死なねぇから」という声が聞こえてきそうです(笑)。

塚本連平監督 撮影/北村史成

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 塚本監督ご自身も、この映画を撮った経験を通して、hideさんの影響を受け、勇気をいただいているようです。こうしてhideさんは、ずっと多くの人々の心の中で生き続けるのでしょうね。

(取材・文/加藤弓子)

■hideさんについて
X JAPANのギタリスト“HIDE”であり、ソロアーティスト“hide”として、『ROCKET DIVE』『ピンク スパイダー』などの名曲を発信した。その個性的なファッションやメイクは、“ヴィジュアル系”という新たなカルチャーをつくりあげ、革新的で時代を先取りした音楽や、おもちゃ箱をひっくり返したような奇想天外なライブパフォーマンスは、日本の音楽シーンに多大なる影響を与えた。

(c)2022「TELLME」製作委員会

■映画『TELL ME ~hideと見た景色~』
1998年5月2日にhideが急逝した。制作途中だったアルバムや既に決定していた全国ツアーがあり、兄の意志を継いだ、マネージャーを務める弟・松本裕士は、hideの共同プロデューサーI.N.A.ら仲間たちとともに動き出す。hide本人不在という異例の状況下で奮闘する裕士たちの前に、さまざまな困難が立ちはだかる……。2022年7月8日(金)全国公開。
配給:KADOKAWA

ホームページ:https://movies.kadokawa.co.jp/tellme/

〈PROFILE〉
塚本連平(つかもと・れんぺい)
1963年生まれ、岐阜県土岐市出身。日本大学芸術学部卒業後、テレビ界入り。『ドラゴン桜』(TBS系)、『時効警察』『特命係長・只野仁』『都市伝説の女』(以上、テレビ朝日系)など数多くの人気ドラマを世に送り出す。映画は『ゴーストシャウト』('04)で監督デビューし、第2作『着信アリ2』('05)のヒット以降、脚本家・福田雄一とタッグを組んだ『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』('08)、近年では『今日も嫌がらせ弁当』('19)、『僕と彼女とラリーと』('21)を手がけた。企画プロデューサーとしてもドラマ、映画、さらに情報バラエティの開発にも携わっている。