社員を雇うのは、その人の人生を背負うこと

──浅野さんは、常に“お客様目線”を大切にされているように感じますが、いかがですか?

「私自身もカフェ巡りが好きなので、お客様目線は大事にしています。カフェに行くと、飲み物だけでなく、必ずケーキなどお菓子を頼むのですが、“一番のオススメは何ですか?”とか“名物は何ですか?”と聞いて、それを注文することが多いです。それによって、どういうお店なのかがわかるんです。

 また、場合によってはスタッフの方に“あなたのオススメは何ですか?”と聞くこともあります。スタッフが“何を好きだと思って、そのお店で働いているのか”が知りたくなるからです

──常にアンテナを張っていらっしゃるのですね。浅野さんは、いろいろな職歴がありますが、「経営者になり、従業員を雇うことになったことで学んだことや心がけていること」は何かありますか?

現在、社員は4人で、アルバイトは60人いるのですが、20代の女性がほとんどです。彼女たちのお母さんが私と同じ年くらいのことも。だから、従業員の気持ちをくみながら、モチベーションを上げるように気を付けています。

 例えば、飲食業界では珍しいのですが、弊社ではネイル、ピアス、髪色、洋服は自由にしています。従業員も楽しみながら働いてもらいたいし、お客さんから憧れられるような存在であってほしいと思っているからです。

 社員を雇うというのは、“その人の人生を背負うこと”でもあります。実は最近、社員の1人が家を買ったんです。“ほぼローンで”と言われたとき、どうしようかと思いました(苦笑)。社員として雇うときは、“一生、この人の面倒を見られるかな”ということを考えます

無駄なことと言われても、お客様の満足のために

──コロナ禍だった昨年8月に、鎌倉で新業態の「Flower Power Cafe(フラワーパワーカフェ)」をオープンしたそうで。花いっぱいの空間とメニューが、とても好評のようですね。

「コロナ禍になる前に、ロンドンでフラワーカフェが流行っている、というのをSNSで見つけてロンドンに視察に行っていたんです。どれも可愛くて、“絶対に日本でやろう”と思いました。

 コロナ禍になって、ちょうどいい物件が空いたのと、その時期は旅行の自粛で遠くに行けない人が多かったので、“お花いっぱいの空間で、癒やしを提供したい”と思い、出店しました。花をモチーフにしたり、花の食材を使った料理を提供したりするのはもちろんのこと、おしぼりもアロマの香りがするようにして、細かいところまでこだわっています

花いっぱいのフラワーパワーカフェの店内 写真提供/トレンドファクトリー

──同店でも、TVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』とのコラボカフェが期間限定で開催されていましたね。

「コラボのアフタヌーンティーセットを提供していたのですが、どうしてもビジュアル的に器の下に“お花の輪っか”を置きたくて、前日の夜中までお店でお花の輪っかを作っていました。それが売り上げに直結するわけではないので、人から見たら、“どうしてそんな無駄なことをしているの?”と思われるかもしれません。でも、今日、お店の口コミをチェックしたら、お客様がSNSで“大満足だ”というコメントを発信されていてので、やってよかったです

デザートプレートの下には、浅野社長がこだわったお花の輪っかが配されている 写真提供/トレンドファクトリー