酒飲みは、西高東低?

──パリッコさんでも、入りづらいと感じる店はあるのですか?

「僕もラーメンとか詳しくないジャンルの店には、ひとりで入りづらいなって思いますけど、興味があれば、ちょっとだけ勇気を出して飛び込むと、すぐ慣れると思うんです。それで、渋い酒場の魅力に気づき始めた頃から、だんだん老舗と呼ばれる店に遠征してみたりしたんですよ

──大衆酒場を求めて、どこに遠征しました?

「近年は関西で飲むことも増えてきて、神戸や大阪にも行きます。東京の人が大阪に飲みに行くとなると、ちょっと怖いイメージがありますよね。ただ、実際に大阪の角打ち(注:酒屋などの一角で立飲みできる店)で飲んでみると、“どうぞどうぞ”と譲り合っていたり、常連のお客さんが紳士的だったんです。“どこから来たの”って聞かれて、東京と答えると“わざわざこの店に来てくれてありがとう”と言って、おすすめを教えてくれたり

──関東と関西で酒場のお客さんに違いがあるのですね。

西高東低みたいな(笑)。あくまで持論なのですが、意外と東京は酔うと面倒くさい人が多いんですよ。それと比べると、関西のお酒飲みの方は紳士な人が多いように感じますね

──この『京風居酒屋 先斗町』店長の石井さん(注:京都にも店を出していたことがある)にも聞いてみましょうか。関東と関西では客層に違いはありますか?

石井さん「東京は、いろいろなところから人が集まってきているから、みんな東京出身の人とは限らないからね。ひとりで東京に出てきていたら、孤独やからね。人を求めるようになっちゃうんじゃないかな

──確かに、さまざまな地方の人が集まった東京より、地元の人が多そうな関西の飲み方がスマートになるのかもしれないですね。ではパリッコさんから見て、酔っ払い客のいい、悪いってありますか?

歳を重ねるごとに、この人、正直めんどくさいな〜って思う人と、かっこいいって思える人と二極化する感じがありますね。横浜の桜木町ぴおシティにある『酒造 石松』に行ったときのことをよく思い出すんです。朝10時くらいから1杯飲んでいたら、スッとひとりでおじいさんがやってきて、“冷とやっこね”って注文した。“えっ、冷ややっこだけ!?”って思って見ていたら、冷酒と冷ややっこで。それをものの5分で平らげて帰って行きました。それを見て“ああ、粋だな”って感じたんです

パリッコさん 撮影/齋藤周造

──では、かっこ悪いなって思ったお客さんはいましたか?

「下町の酒場なんかで、誰か話しかけられるやつはいないか? って、常に網を張っているような酔っ払いのおじさん、たまにいますね。ああいうのはちょっと、と思います」