酔って眼鏡が入れ替わっちゃった!?
──パリッコさんは、酔うとどうなるのですか?
「寝ちゃうんですよ。暴れるとかじゃなくて寝ちゃう。よくないと思いつつ、外だと飲みすぎちゃう。楽しい飲み会だと抑えられないんです……」
──1日に何杯までって決めていますか?
「決めてないんです。でも、3軒ハシゴして2杯で終わるわけはないじゃないですか(笑)。そんなに強いほうでもないのに」
──お酒で失敗したことはありますか? 例えば、何かなくしたりとか。
「財布は一度、なくしていますね。あれは本当に後悔してます。スマホは何度かなくしていて、だけど毎回どこかに届いては戻ってきてくれてるので、届けてくれた人に心から感謝ですね。そういえば、『四谷OUTBREAK!』というライブハウスにDJとして出演したときに、ホッピーセットが飲めたので結構、酔っ払っちゃったんです。翌朝、枕元にある眼鏡が自分のと似ているんだけれど、自分のではなかったんです。誰かの眼鏡と入れ替わっちゃったんですよ(笑)」
──自分の眼鏡は手元に戻ってきましたか?
「どうだったかな……僕はライブハウスに眼鏡を返しに行ったんですが、僕の眼鏡は届いてなかったような。持って行っちゃった人が今も気づかずかけてるんじゃないですかね(笑)」
──パリッコさんは酒場ライターだけでなく、DJやミュージシャンとしての活動もされていますが、出演されるときも飲んだりしているのでしょうか……。
「僕は飲んじゃうと、出演者としてステージをやりとげられないんです。モニタースピーカーっていう出演者に音が聞こえるようにしているスピーカーがあるんですけど、それって傾斜がついていて、背を預けるのにちょうどいいんですよ。音の振動が感じられてマッサージ椅子みたいな(笑)。気づいたらステージで寝ていたんですよね。20代の頃の話ですが。こんなことを聞いても、記事にならないんじゃないですか?」
──いえいえ、大丈夫ですよ。パリッコさんはお酒を飲んでいたら、幸せを感じますか?
「そうですね。人間ってこの世に生まれ落ちて、そして、なぜ生まれ落ちたかもわからないのに、死ぬまで生かされている。だから、せめて楽な状態になりたいって思うんですよ。大人になってお酒の味を知ったら、ふわふわってして気持ちいい」
──つまり、お酒が現実逃避になるのでしょうか。
「現実逃避というよりも、現実ですよね。これが。若かりし頃って、自分が何で生まれてきただろうって悩むときもあるじゃないですか。でも何かのために多分、生まれてきたんじゃないと思うんですよ。地球の営みの一部にいるだけ。だったら、お酒を飲んでふわふわしていたいって思うんですよね」
──それだけお酒が好きだと、もしも飲めなくなったらどうしますか?
「大衆酒場でノンアルコール飲料を飲んでいるおじさんがいるんですよね。それはそれで楽しそうって思う。でも僕は飲めなくなったら、片岡鶴太郎さんみたいにヨガとか別のものを探すと思う。そっちはそっちで面白いというか。飲めなくなったなりの面白さを見つけますね」
◇ ◇ ◇
コロナ禍において、お酒との付き合い方が変わった人もいるかもしれません。職場などの飲み会が減った分、ひとりで飲んだりする機会が増えたと言えます。でも少し勇気を出してみて、地元や気になった店ののれんをくぐってみると、そこには今まで気づかなかった幸せが広がっているかもしれませんよ。
(取材・文/池守りぜね)
■撮影協力:京風居酒屋 先斗町
東京都新宿区歌舞伎町2-9-18 ライオンズプラザ新宿1F
〈PROFILE〉
パリッコ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー他。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『晩酌わくわく!アイデアレシピ』(Pヴァイン)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、スズキナオ氏との共著に『“よむ"お酒』(イースト・プレス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(Pヴァイン)など。最新刊は清野とおる氏との共著『赤羽以外の「色んな街」を歩いてみた』(扶桑社)。