第二、第三の『田中まさお』に出てきてほしい

 さいたま地裁で敗訴した田中さんは東京高裁に控訴した。高裁の判決は2022年8月25日に言い渡される。

──高裁判決にはどんな期待を寄せていますか?

勝てばラッキーですけど、期待していません。そもそも『給特法はおかしい』という裁判だけど、ぼくは『今すぐ給特法を廃止せよ』という主張には反対なんです。ほかの状況を変えずに給特法を廃止しても、たぶん先生のサービス残業が増えるだけです。教育とは何か、自由とは何か。一人ひとりがじっくり考えないと、この問題は解決しないと思います

──高裁判決のあとは……。

「高裁で勝てなくても最高裁まで進むつもりですし、最高裁がダメでも、次の行動を考えています。今度は全国の学校を管理する一人ひとりの校長に、もしくは学校の設置権者である自治体の首長に、問いかけてみたいですね。“学校の先生がこんな働き方でいいんですか?”、“それでは日本社会から自由がなくなりませんか?”とね

──裁判のあとも田中さんの活動は続くのですね?

この活動はぼく1人では終わらないでしょう。次世代の先生と学校そのもの、さらには日本社会に自由を取り戻すのが目標ですから。ぼくの裁判が終わったら、また誰かが裁判を起こしてほしいです。ぼくは『田中まさお』という仮名を使いました。できればこの仮名を引き継いで、第二、第三の『田中まさお』に出てきてほしいですね」

──これからの先生、子どもたちのためですね?

「ぼくの世代は『仕事がすべて』という人が多かったのではないでしょうか。これからの人には、自分の人生を豊かにしてほしいです。美しく、おしゃれに働いてほしい。そのためには何が必要か考えてほしいと思っています」

(取材・文/牧内昇平)