百変化したい欲求が役を選ぶ基準
──内野さんが多忙な中、ご自身の出発点でもある舞台に立ち続けていらっしゃる理由はなんですか?
「お芝居の稽古はしんどいことのほうが多いですが、生みの苦しみがあるほど、いい作品になるようです。今回も非常に苦しむのだろうなというのはあるんですけど。そのぶん初日を迎えて、自分で及第点だと思える作品を出せたときは、やっぱりうれしいですし。それが毎公演の中でどんどん育っていって、より豊かなものをお客さまに提示できるという喜びもありますよね。あと、観客から反応がダイレクトに伝わってくるので、演じながらお客さまのエネルギーを取り込んでいるんですよ。そういう劇場の空間で、なんか勝手にトランスして自分でも思いもよらないところまで行ってしまうという経験は、映像の現場ではなかなかできないことかもしれないです」
──それは役者としての快感でもあるのでしょうか?
「生みの苦しみが嫌いなら、役者をやめたほうがいい(笑)」
──ゲイカップルの日常を描いた大ヒットドラマ『きのう何食べた?』の主人公のひとり、美容師のケンジ役を内野さんが演じられたのは、いい意味で視聴者を裏切り、新たなハマり役の誕生となりました。役柄や作品を選ぶときのポイントは何ですか?
「僕は役者という仕事をさせてもらっているので、役を生きつくすことが僕のミッションなんです。常にいろいろな役にチャレンジしたいという欲望はあって。だから、『何食べ』のケンジさんもそうですけど、“俺、これやるの? 無理でしょ?”って思うくらい違和感があったほうがうれしいんですよ。以前、似たようなイメージの役をやったから今回もそういうふうにやってほしいという依頼が来ると、実はあまり食指が動きません。七変化どころか百変化したいみたいな欲求が、選ぶ基準になっているところはあります。あとは、プロデューサーさんや監督さんの本気度を感じて、“ぜひ! 一緒に戦わせてください”ってなるときですね」
──『きのう何食べた?』のように、まさか演じると思っていなかった役がくると、してやったりと?
「新しいチャレンジですので、それは闘志がメラメラとわきます(笑)」