「ナルゲキが好きだから来たい」で“次のステップ”を実感
──そのなかで2021年の4月6日に寄席小屋の「西新宿ナルゲキ」をオープンされました。これまでの芸人ファーストな姿勢をお伺いすると「コロナ禍だからこそ」という感覚もあったんだろうな、と。
「そうですね。芸人さんにとってもファンの方にとっても、“そこに行けば毎日何かしらのお笑いライブをやっている、という場所を作りたい”という気持ちはありました」
──ナルゲキについてお客さんからの評判はいかがですか?
「それまでは『K-PROが考えたもの』という面で評価していただいていたのですが、オープンして1年以上がたち、今では、“ナルゲキが好きだから”というお声をいただけるようになりました。
『K-PRO』というくくりから一歩先に進んだ感覚がして、自分たちにとっても次のステップに進んでいると思いますね。お客様から、“お笑いってかっこいいんだ”と感じてもらえるような場所にしていきたいと思っています」
──私も伺ったことがありますが、初めての人でも楽しめる環境ですよね。パイプ椅子を並べている劇場が多いなか、ナルゲキは映画館みたいな座り心地のいい椅子になっているし、アングラ感もなくてポップな雰囲気です。「家族でも来れるなぁ」って思いました。
「ナルゲキは常に、“初心者の方・初めての方、大歓迎”と言っています。というのも、“お笑いを観るために劇場やライブハウスに行く”って、けっこう勇気のいる一歩だと思うんですよ。私自身、最初は『友だちに誘われたから行った』ので。
でも、行動したことによって世界は本当に広がると思うんです」
──児島さんのように人生を豊かにしてくれる出会いもありますよね。
「はい。だから、“お笑いをテレビで観るのは好きだけど、ライブハウスはちょっと怖い”と考えている方にこそ、安心して来てほしいですね」
新たな"壁"を登り続ける強さに感じた「ひとつのことを極めるためのコツ」
とにかく“芯"の強い方だった。
仕事にしても趣味にしても「壁」にぶつかる瞬間はどこかで訪れる。そこから背を向ける人もいれば、横道を探す人もいる。その点、児島さんは灰皿を投げつけられても、赤字続きでも真っ向からガンガン壁を登っていく。
これが、とんでもなくかっこいい。“優しい世界まっただなか”の2022年では、スパルタ・スポ根チックなエピソードは見なくなった。嫌なことから逃げることは、場合によってはすばらしい選択だ。しかし、何でもかんでも逃げすぎて「頑張りたい」という必死さを忘れてはいけない。「好きなことに対する情熱や意地」は、昭和とか平成とか令和とか、時代は関係ない。人生を豊かにするうえで大切な感情だ。
いま彼女は「お笑いライブ界隈の人であれば、知らぬものはいない」というほどの存在になった。しかし進化は止まらない。彼女は「西新宿ナルゲキ」を作り、また新たな壁を登っている。常に「お笑いライブ」というくくりのなかで新たな課題を見つけ、高みを目指す姿勢。ここに「何かひとつのことに熱中し続けるためのコツ」がある。
そんな彼女が運営する西新宿ナルゲキは、先述した通り「初心者の方も来やすいお笑いの場所」である。初めての方も、家族連れも気軽にふらっと行ける“敷居の低い寄席小屋”だ。「テレビではお笑いバラエティをよく見るけど、現場には行ったことがない」という方にこそ、ぜひ訪れてほしい。
もちろん寄席を見て腹を抱えて笑える。それだけでなく、画面越しではわからない芸人さんの必死でかっこいい一面を知れる。すると、忘れかけていた「何かを必死に追い求める気持ち」を思い出すこともあるだろう。「お笑いライブ」は、ただ笑えるだけでない。人生を楽しむためのヒントを見つけられる場所なのである。
(取材・文/ジュウ・ショ)