ホラーは苦手だったが『ザ・グリード』で“開眼”する
──では小学生のころにアクション映画にハマり始めたんですね。中学生になっても、映画熱は変わらず?
「はい。むしろ中学生に入ってからアクション映画好きが加速しました。そのきっかけになったのが『リベリオン』というクリスチャン・ベール主演のアクション映画でしたね。
作中で“2人が超近距離で銃を撃ち合って互いに避けまくる”っていうシーンがあるんですよ。そんなのもう……“中二病”真っ盛りの私からしたら、かっこいいに決まってるじゃないですか(笑)」
──それはヤバいですね。男の子はみんなハマるやつ(笑)。
「それで、“もっとかっこいいアクションシーンを見たい”と思って、レンタルビデオ店に映画のDVDを借りにいくようになり、アクション映画オタクになっていきました」
──当時から今みたいにホラー映画も見ていたんですか?
「いや……生来、根がビビりなもので“パニックもの”の映画はずっとダメだったんですよ。小学生のころから図書館のVHSで『学校の怪談シリーズ』は見ていたので、興味はあったんだと思います。でも、『学校の怪談』がやっとだった」
──え! めちゃめちゃ意外ですね。なにかトラウマを植えつけられたりしたんですか?
「う~ん……いや、苦手になった明確なきっかけは覚えていないんですよね。でも小学校低学年のころにテレビで見ていた『奇跡体験!アンビリバボー』とか『USO!?ジャパン』のホラー回は、もう確実にトラウマが残ったのかな、と(笑)。特にアンビリバボーの再現VTRとか、ちょっと小学生としては容赦がなかった……」
──わかります、わかります(笑)。平成中期のころって“心霊もの”のテレビ番組が多かったですよね。じゃあ、どのあたりでパニックとかホラーにハマるんですか?
「中学生のころに地上派のゴールデンタイムで『ザ・グリード』っていう映画が放映されていたんです。“船のなかに化け物が現れて、人を喰(く)いまくる”っていう、そこそこ過激な作品なんですけど(笑)。この作品がホラーとパニック映画にハマるきっかけになりました」
──明確にハマるきっかけになった作品を覚えていらっしゃるのがオタクっぽくて好きです。『ザ・グリード』のどのあたりに魅力を感じたんでしょうか。
「なんといっても化け物の造形がすばらしかった。これに尽きます。『グリード(貪欲)』という言葉がそのまま生命を受けたような、とにかく人を喰うためだけにデザインされたビジュアルで、“こんなクールな見た目の化け物が暴れまわる映画があるのか!”と衝撃を受けました。
そんな化け物然としたヤツが、もう船をボッコボコに壊しながらすごい勢いでやってきて、次々と人を喰うわけですよ。化け物の腹のなかから“絶賛消化中で身体が溶けかけた人”とかが出てきたり……。そんなショックシーンもあるんですよね」
──おぉ……。地上波のゴールデンタイムとは思えないほどグロい……。
「もう悲惨ですよ(笑)。次々にインパクト抜群のシーンが出てきて、とにかく勢いがすごいんです。グロい映画は苦手だったんですけど、それを上回るくらい“化け物のインパクト”に魅了されて気分が高揚したんですよね。
それで、“映像にもっとインパクトがある作品はないか”って漁りはじめたのが、今に至るきっかけですね」
──なるほど。今と違ってインターネットも発達していないですよね。どうやって漁ってたんですか?
「探す方法として、2パターンあって。まず1つめは『レンタルビデオ店に行って、DVDのジャケットにデカデカと化け物が載っている作品を片っ端から借りる』という(笑)」
──ギャンブル性が高い(笑)。
「で、もう1つ、クリーチャー映画好きにとってバイブル的な『モンスターパニック』っていうシリーズの本があるんですよ。クリーチャー系の映画だけを600作くらい(※)集めた本なんですけど(笑)。それを読んで気になった作品を、どんどん発掘していきましたね」
(※『モンスターパニック―超空想生物大百科』と『モンスターパニックreturns!―怪獣無法地帯』〈ともに大洋図書刊〉の2冊を合わせた数)
──いや、ちょっと中学生にしては変態すぎます(笑)。よく『モンスターパニック』の存在にたどり着けましたね。
「これがですね。近所のイオンモール内の映画館に、たまたま1冊ずつ売ってたんですよ。表紙に数々のクリーチャーが載っていて“これは買うしかないぞ”と。それで親にねだって、買ってもらって(笑)」
──ご両親もびっくりしたでしょうね(笑)。
「おそらく(笑)。いや本当に『モンスターパニック』は、すごい本なんですよ。1作ごとに解説文と怪獣のスチール写真が載っていて……。写真があるので、かっこいい怪獣を見つけると、“次はこの作品を見よう”って思えるんですよね。レンタルビデオ店に置いてないマニアックな作品のほうが多いんですけど(笑)。
今の人生をたどるうえでのターニングポイントというか、SNSもない時代だったので、『モンスターパニック』にはホント助けられました。上京時に実家から持ってきたくらい思い入れの深い本ですね」
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インタビュー第1回は、人間食べ食べカエルさんの小・中学生のころを振り返っていただいた。次回は高校生時代から現在に至るまでを思い出深いホラー作品とともに語っていただく。
(取材・文/ジュウ・ショ)