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生き方

【サカキシンイチロウさんが綴るパートナーとのおいしい記憶#5】いまも思い出す、料理に喜ぶタナカくんの横顔

SNSでの感想
シェフが料理するところが見えるカウンターが、ふたりの定席だった
目次
  • 毎週、お互いに行きたいお店をプレゼン対決
  • ふたりとも大好きな六本木のイタリア料理店
  • カウンターの左端の席から見ていた景色
  • あれから2年たっても足を向けられずに
  • タナカくんと出会って変わった、いろいろなこと

 人生の折り返し地点を過ぎると、親しい人との別れが身近になってきます。親や配偶者、友人たち……。大切な人を見送ったあとをどう過ごすかは、人生100年時代の大きな課題でもあります。

 サカキシンイチロウさんは、これまで1000社以上の飲食店を育成してきた、知る人ぞ知る外食産業コンサルタント。ほぼ365日、朝・昼・晩問わず、あらゆるレストランへ出かける、いわば“食べることのプロ”。ブログやFacebookでは、おいしい店の見つけ方、付き合い方を発信していますが、そこには、2年前に亡くなったパートナーとの思い出も度々登場し、「おいしい記憶を分かち合える人がいる幸せ」を読み手に気づかせてくれます。

「つらいときほど、食べることを大切にしなくちゃいけない」というサカキさんに、ご自身の体験を綴っていただく短期集中エッセイ最終回です。

◎第1回:【サカキシンイチロウさんが綴るパートナーとのおいしい記憶#1】最愛の人を失った夜、ひとりで食べた冷凍うどん
◎第2回:【サカキシンイチロウさんが綴るパートナーとのおいしい記憶#2】ボクらがたどり着いた“世界一のサンドイッチ”
◎第3回:【サカキシンイチロウさんが綴るパートナーとのおいしい記憶#3】残りもののおかずを“よそ行き”に変える魔法
◎第4回:【サカキシンイチロウさんが綴るパートナーとのおいしい記憶#4】遠くの有名店より“おなじみ”があるシアワセ

毎週、お互いに行きたいお店をプレゼン対決

 ボクらふたりで「どっちのお店ゲーム」っていうのを毎週、土曜日の夜にしていました。

 翌週にふたりで一緒に行くお店を決めるゲーム。

 雑誌やネットで調べたお店。知り合いに教えてもらったお店や、長い間行ってなかったオキニイリのお店を、ひとり1軒選んで互いにプレゼンをする。

 そのお店の特徴や行きたい理由を説明し、ふたりで相談して1軒決めて、そこに行くことを次の週のメインイベントに1週間のスケジュールを決めていく。

 予約が必要なお店があったり、とても気軽な食堂みたいなお店もあったり。バーや喫茶店の場合は〆のお店や、前後のイベントも考えプレゼンしていくのです。

 たのしかったなぁ……、自分の好みの店をどうやったら彼の行きたいお店にできるか。相手がびっくりするような予想外のお店を一生懸命さがしたり、それはそれはたのしかった。実際にお店に行ったらがっかりだったこともある。でもふたりで決めた店なんだと思えば、そのがっかりもいい思い出になるんですよね。

ふたりとも大好きな六本木のイタリア料理店

 まれにふたりが同じお店を選ぶこともあった。そんなときには「つながってるね」なんて言って、お店に行く前からワクワクしたもの。

 ゲームの勝敗はたぶん、7対3でボクの勝ちって感じだったんじゃないかなぁ……。「口では絶対パパには勝てない」って、あきらめ顔で言っていました。なつかしい。

 このゲームにはオールマイティーのジョーカーカードがありました。そのお店の店名を告げれば抗しがたいほど、ふたりにとってのオキニイリの店。10軒ほどもありましたか……。強力なカードだから頻繁に使うわけにもいかず、特別な日が控えているときなんかに出していた。

 そんなジョーカーカードのひとつに『オステリアナカムラ』という六本木のイタリア料理のお店がありました。

六本木のイタリア料理店『オステリアナカムラ』

 タナカくんが探してきた店。ごきげんなご主人が料理を作り、凛々しくほがらかな奥さんがサービスをする気軽なお店。キッチンの前のカウンターがボクらの定席。カウンターの一番左端がボクの席。ボクの右側にタナカくん。目の前で次々料理が出来ていくのを見ながら食事をするのがタナカくんは大好きでした。

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