タナカくんと出会って変わった、いろいろなこと
ふたりでいたからたのしかったこと。
ふたりで食べたからおいしかった料理。
ひとりでさみしくしていると、ふたりで作った思い出におしつぶされそうになってしまう。
果たしてタナカくんと会う前のボクは一体、なにものだったんだろう?
仕事が中心の生活で、家で料理を作ることなんてまずなかった。
ボクの好きなものだけ置いた部屋。
外食するのも自分の好きなお店で自分の好きな料理を食べてた。
今のボクは料理を作る。
タナカくんが好きな料理を食べたり、タナカくんが好きだった店に行くと、気持ちがざわつきながらもホッとする。
タナカくんが着ていた服や集めていたものが部屋にはたくさん残ってる。
タナカくんが好きだった歌をふとしたはずみに口ずさみ、いつの間にかタナカくんが好きだったホラー映画やアニメをボクも好きになってる。
ボクの生活と彼の生活が、出会って25年という月日でボクの生活になったんだなぁ……。
ボクの今の生活を大切にすれば、タナカくんとの生活を続けていける。それがボクの気持ちのおきどころ。
でもね……。
やっぱり一緒に歳をとりたかったなぁ……、って思う。
かなわぬ贅沢。
さようなら。
オステリアナカムラ
東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル2F
営業時間:18:00~23:00(22:00ラストオーダー)
月曜・第2日曜休み
《PROFILE》
さかき・しんいちろう 1960年、愛媛県松山市生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、店と客をつなぐコンサルタントとして1000社にものぼる地域一番飲食店を育成。現在は、飲食店経営のみならず、「食」全般にわたるプロデュースやアドバイスも手がけている。「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載をまとめた『おいしい店とのつきあい方。』(角川文庫)など、著書多数。ブログ、FB、note等を毎日更新。食べることの楽しみを発信している。