氣志團と“運命の出会い”をはたし、マネージャーに応募

──『双数姉妹』を退団したあと、劇団☆新感線や劇団カムカムミニキーナ、NODA・MAP、ナイロン100℃など、そうそうたる劇団の舞台に出演しながら演技の幅を広げていった明星さん。劇研のころから変わらず夢中になれる女優業を休業してまで、氣志團のマネージャーを務められていた時期がありますよね。

「ははは。そうですね。2000年ごろだったと思うんですが、鳥肌実さんという芸人さんに“面白いグループと一緒にやってるから見にきてよ”と誘われて行ってみたのが最初です。もう、見た瞬間に射抜かれたというか、“なんだ、これは!”っていう衝撃がすごかったんです

──氣志團のパフォーマンスのどの部分に、もっとも惹かれたんでしょうか。

「すごく“演劇的”だったんですよね。彼らの“リアル”はどこにあるのだろう、本当はどんな人たちなんだろう、って興味がわいてきて、ステージを何回か見に行ったんです。でも、“これはちょっと、裏側まで見ないと気がすまないな”って思ったのが、スタッフに応募したきっかけですね」

──メンバーの素顔への興味から、スタッフになられたのですか?

「そうです。当時、ライブで配られていたチラシの端っこに、“スタッフ募集”って書いてあった。そこから応募したら、翔さん(綾小路翔。團長かつメインボーカル)ご本人から連絡がきたんです。下北沢の喫茶店で面接をしたんですが、翔さんは学ランで来ていました」

──さっそく、インパクト大ですね(笑)。

「向こうは取材の帰りだったみたいですね。当時の氣志團には1人もスタッフがいなくて、メンバーがライブチケットのもぎりまでしていた。私も最初は女優をやめるつもりはなかったので、そういったもぎりとか、ライブのお手伝いくらいはできれば、と思って始めました。しばらくすると作業が広がって、ライブ『氣志團現象』(2001年7月1日、渋谷ON AIR WESTにて開催)では演出のお手伝いも始まり、私の友人を呼んでバックダンサーをしてもらったりもしました

──気づいたら、お手伝いだけの範疇(はんちゅう)を超えているような気がしますが……。

“いつだって全力”が私のいいところなんですけれど(笑)、やっぱり依頼されると、あらゆる作業に全力投球していましたね。スタッフを始めて約1か月で、いくつかのレコード会社から氣志團に“デビューしませんか”っていうオファーが来たんです。契約するにあたって、翔さんが出した条件が2つあって、1つは“学ランを新調してください”、2つめは、“メンバー以外に1人、スタッフを一緒に入れてください”っていう。それが私だったんです

──なんと! 信頼されていたのですね。氣志團のマネージャー業が本格的になっていく中、女優業との兼業については迷われましたか?

「これはもう、両方は無理だなっていうのがわかっていました。女優を続けるという選択肢は、そのときはあまり考えなかったですね」

──お聞きしていると、興味・関心があることに一心に取り組まれるタイプだと思いました。

「そうなんですよ! 大きな船が今、まさに出ようとしている。そこに自分が乗るか、乗らないかってなったら、“乗らない”っていう選択肢は生まれませんでした」

──そこから、女優業を休業して氣志團マネージャーとして邁進(まいしん)されていくのですね。

「女優としては、KERAさん(劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ)の作品『すべての犬は天国へ行く』(劇団『ナイロン100℃』2001年初演)が、私の“演劇第1章”の最後の公演です。そこから休業しました。この公演は、氣志團のメンバーも見にきてくれたんですよ」

大きな船に乗り、大海原に繰り出した明星さんを待っていたのは──!? 撮影/廣瀬靖士

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 厳しい現場に負けず前向きに成長し、「気になる」「やりたい」と興味がわいたことに対して、とにかく全力で向き合う明星さん。インタビュー第2弾では、氣志團のマネージャーとして駆け抜けた4年間について、女優業に復帰して覚えた舞台に上がることへの恐怖、そして“家”が導いた結婚など、人生のターニングポイントや今後の展望について、じっくり語っていただきます。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
明星真由美(みょうせい・まゆみ) ◎1970年、大阪府生まれ。早稲田大学演劇研究会や小池竹見が主宰を務める劇団『双数姉妹』で演劇を学んだのち独立し、ナイロン100℃や劇団☆新感線をはじめとする実力派の舞台に数多く出演。2001年に女優業を休業し氣志團のマネージャーを務めるも、2005年に女優復帰。以後、舞台に限らず数々のテレビドラマや映画で好演を重ねる。昨今では『イチケイのカラス』(フジテレビ系)や映画『エキストロ!』に出演したほか、2022年7〜8月には吉田羊、大原櫻子との共演舞台『ザ・ウェルキン』に出演。

シス・カンパニー公演『ザ・ウェルキン』
作:ルーシー・カークウッド/翻訳:徐賀世子/演出:加藤拓也
【東京公演】2022年7月7日(木)~7月31日(日) Bunkamuraシアターコクーンにて
【大阪公演】2022年8月3日(水)~8月7日(日) 森ノ宮ピロティホールにて
◎公式サイト→https://www.siscompany.com/welkin/