──さまざまな苦労がありながらも、再度2004年にメジャーデビューされたのはどうしてですか?

最初のレコード会社だった日本クラウンで俺らをデビューさせてくれたディレクターが、今の所属レーベルのあるテイチクに移っていたんだよね。それで“もう1回やらせてくれ”って言ってきた。俺らは“もういいよ”って3年くらい断っていた。でも“このままじゃ死に切れん”っていうからね(笑)。じゃあ、一緒にリベンジしようかって始めたんだよ

──その時は、音楽で食べていく覚悟ができてたってことでしょうか。

「いいや。最初からそんなに稼げるわけじゃないから、全くバイトしなくてよくなるわけじゃないよね。バイトの割合がどんどん減っていって、“あれ、ゼロになったよ”っていう感じ。やっぱりメジャーのメリットは、インディーズでは届かないところまでCDが届くことだと思う」

増子直純さん 撮影/吉岡竜紀

──バンドが軌道に乗り出した時に、増子さんが“キャンペーンで新幹線に乗れた”という発言をされたのを覚えていますが……。

(新幹線移動なんて)本当、すげえなって思った。ちょっとうれしかったね。でも最近は逆に俺が気遣うようになったよ。“ここはもうちょっと経費を下げて”なんて。なんで俺が考えているんだっていう(笑)

──怒髪天はバンドだけではなく、レコード会社やスタッフの方々も含めて一緒に戦っている感じがします。

それはやっぱり一蓮托生(いちれんたくしょう)だと思っているからね。だから“お金をかける部分はここじゃなくていいんじゃない?”って言うし、今はそういう話ができる環境に恵まれてラッキーだって思う。どんなに金をもらっていても、自分たちのことを本当にいいと思ってないチームだったら、それはやっぱり不幸だからね

武道館ライブはご褒美。ファンのみんなに会うため日本各地でライブの日々

──2014年1月12日には念願の日本武道館でのライブを行っています。武道館が決まった時、どう感じましたか?

俺は最初、反対したんだけど。そんな大変なことで借金したりしたらどうすんだよって思った。でもメンバーから“借金なんて働いて返せばいいじゃん”って言われた。“このチャンスを逃したらもうないですよ”って言われるし、“じゃあやるか!”って腹をくくったけど。その後は、とにかく忙しかった! ライブの1年前に開催発表してプロモーションを1年かけてやるなんて、俺らの周りでは誰もやったことがないチャレンジだったけど、面白かった」

──怒髪天のメンバーが武道館のステージに立った時、ファンをはじめ親しいミュージシャンもみんな泣きそうなくらいうれしかったと思いますよ。

俺が一番泣いていたけどね(笑)。あれは俺らだけで成しえたものではないし、長くバンド活動を続けてきたご褒美をもらったって思っている。怒髪天の活動を外から見た時に、武道館ライブは一番大きなものだと感じているし、お客さんに対しても、大きな借りを作ったなと思っているよ

増子直純さん 撮影/吉岡竜紀

──怒髪天は今でも全国各地のライブハウスで演奏しています。ライブハウスにこだわっている理由はあるのですか? ツアーは東名阪だけというように、地方ライブが少ないアーティストもいますが……。

「それは売れているバンドじゃない(笑)? やっぱり、バンドは、全国各地津々浦々をまわることが醍醐味(だいごみ)だしね。1年に1回でも、その土地のお客さんにとっての祭りみたいなものになったらいいなって思ってライブしている。やっぱり生で見てもらいたいからね

  ◇   ◇   ◇  

 第2弾インタビューでは、50代を孤独に過ごさずにすむ方法や、コロナ禍でのライブ活動など、増子さんのロックに対する熱い思いを聞いていきます。

(取材・文/池守りぜね)

〈PROFILE〉
増子直純(ますこ・なおずみ)
1966年、札幌市出身。怒髪天のボーカル。一度見たら忘れられないエモーショナルなライブスタイルと、その真逆をいく流ちょうなMCが混在するステージは圧巻。その気さくなキャラクターで「兄ィ」の愛称で親しまれている。過去、ゲーム専門誌ファミ通で連載コーナーを持つほどゲームへの造詣も深く、また、お宝鑑定団へ出演するほどの生粋のヘドラコレクターでもある。楽曲提供、TVCM、映像/舞台作品出演も積極的に行うなどマルチに活躍中。

ドハツの日 特別公演 "セカン怒インパクト"
2022年10月19日(水)ダンスホール新世紀(東京/鶯谷)
2022年10月20日(木)ダンスホール新世紀(東京/鶯谷)
開場18:15 / 開演19:00 / 終演予定21:00
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