サン・アローで初めてぬいぐるみの企画製造、販売を行ったのは、1979年。国内外で開発が進んだやわらかい素材を使ったウサギやクマ、ネズミなどの「森のパーティ」シリーズが発売となりました。そして1982年に、その後ロングセラーとなる「ラッキー・マック&サンディ」が登場します。
「洋服を着ているのが特徴の『ラッキー・マック&サンディ』は、おそらく'80年代前半に日本で一番売れたぬいぐるみだったのではないでしょうか。ウレタン素材が開発され、ぬいぐるみの詰め物の綿(木毛)に代わるやわらかい素材として使われるようになりました。ぬいぐるみには、実はアパレルなどのほかの業界の進化が関係しています。新しい素材によって、ぬいぐるみの毛や詰め物、着せる服や装飾品に変化や広がりが生まれました」
あの人気アニメ映画から“キャラクターのぬいぐるみ化”が始まる
1989年、サン・アローにとって新たなぬいぐるみ作りの扉が開きます。
「1988年は、スタジオジブリのアニメ映画『となりのトトロ』が劇場で公開された年。当時の社員が作品を見て“トトロのぬいぐるみを作ってみたい!”と思い、その情熱からライセンス契約交渉に乗り出しました。宮崎駿監督にもお会いしてトトロのぬいぐるみを見ていただき、1989年に発売に至ったんです」
『魔女の宅急便』『紅の豚』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など、ジブリアニメのぬいぐるみを企画製作し、販売していきます。
「それまでのぬいぐるみは、ウサギ、ネコ、イヌといった“ノンキャラ”(版権を持たないキャラクター)のものがほとんどでした。動物園に行ったときに買ってもらうようなパンダやクマのぬいぐるみもそうですね。当時は“すでにこの世にあるキャラクターをぬいぐるみ化する”という概念はなかったのかもしれません」