1998年にはイギリスのクレイアニメーション『ウォレスとグルミット』を、2000年にはスウェーデンの映画『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』に登場するバムセのぬいぐるみを発売。アニメ映画だけではなく、海外のキャラクターに着目し、ぬいぐるみを作るようになりました。

<左上>映画『ウォレスとグルミット』のウォレスとビーグル犬のグルミットのぬいぐるみ。<右上>映画『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』の主人公である5歳のロッタちゃんが抱えているバムセのぬいぐるみを商品として発売。<下>1998年に開催された長野オリンピック大会マスコット「SNOWLETS(スノーレッツ)」の公式ライセンス商品も製作している 写真提供/サン・アロー

 ただ、「キャラクターのぬいぐるみを作りながら、ノンキャラのテディベアも作っていました」と関口社長は言います。

 テディベアとは、クマのぬいぐるみ全般のこと。厳密な定義はなく、特定のキャラクターではないので、いわゆるノンキャラの枠になります。サン・アローでは、トトロのぬいぐるみが発売された翌年の1991年に、クマのぬいぐるみシリーズとして「テイルズ&テイルズ」を発売。翌年には「キッズベア」を発売するなど、クマのぬいぐるみ作りに情熱を注いでいます。

「1995年、伊豆にテディベア・ミュージアムをオープンし、'97年には那須、'99年には箱根(現在は閉館)にもミュージアムを作りました。多くの人がテディベアに出会う場となっています」

 サン・アローのテディベアのシリーズは、「メロディ」「キッズベア」「TEATIME」「くるみちゃん」「森のくまさん」と多彩。ノンキャラのクマを、広く受け入れられるようにかわいくデザインするのは「それこそ感性だと思います」と関口社長。「ノンキャラなので、色が決まっているわけでも目の位置が決まっているわけでもありません。多くの人に“かわいい”と受け入れられるようにするのがデザイナーの力であり、企業の力だと思います」

サン・アローのクマのぬいぐるみシリーズ。目の大きさや位置、毛並みなど、よく見るとさまざま顔をしている 撮影/編集部

「女子高生や大学生が気に入るか」をカギにぬいぐるみ化を進めていく

 2003年には、ベルギー発のノンキャラクターのハリネズミの『モーリー』を輸入し、発売しました。「これはヴィレッジヴァンガードでめちゃくちゃ売れたんです」と関口さん。ヴィレッジヴァンガードとは、「遊べる本屋」をキーワードに書籍やさまざまな雑貨を展開する複合型書店で、高校生や大学生が多く集う場所。このヴィレヴァンでなぜ売れたのでしょうか。

2000年に入る頃には、消費者の好みがノンキャラからキャラクターのものにも移っていったんですよね。ぬいぐるみの製作は、映画にとどまらず、絵本や海外の雑貨などにも広げていきました。

 フランスで人気の絵本『リサとガスパール』のぬいぐるみや雑貨を手がけましたし、2006年には絵本『はらぺこあおむし』や、アメリカで人気のキャラクター『スージー・ズー』のぬいぐるみを発売しました」

15〜20年前にヴィレッジヴァンガードやソニープラザ(現・プラザ)で見かけた人も多いであろうキャラクターたち。<左上から時計回りに>2003年にハリネズミの『モーリー』、2004年にフランスの人気絵本『リサとガスパール』、2006年に『スージー・ズー』『はらぺこあおむし』のぬいぐるみを発売 写真提供/サン・アロー

 思い返すと、私も2006年に発売された『スージー・ズー』のぬいぐるみを女子高生がバッグにつけている光景を目にしたことがありました。大学生の頃にはプレゼントとしてぬいぐるみのキーホルダーをもらうなど、若い女性が気に入っていた記憶がよみがえります。

女子高生や大学生が気に入るぬいぐるみは、一番売れましたね。そのぐらいの世代は、自由に買い物ができ、かわいいものが大好き。ぬいぐるみといえば小さな子どもが買うものと思われる方が多いですが、実は小学生ぐらいの子どもたちに向けてぬいぐるみを作ることって、一番難しいんです

 女子高生や大学生の心に響くぬいぐるみかどうかは、サン・アローのぬいぐるみ製作のひとつの観点になっているそうです。これは、ただ“かわいい”だけではなく、オモシロ系やキモカワ系など、いろいろな視点が含まれています。2010年に発売した『こびとづかん』のぬいぐるみや雑貨はまさにそのジャンル。当時の若者のハートをつかんだのです。

<左上から時計回りに>ロシアの国民的キャラクター「チェブラーシカ」は2007年に発売。2009年に絵本『フレデリック』のぬいぐるみ・雑貨を発売。2010年には東京スカイツリー公式キャラクター「ソラカラちゃん」のぬいぐるみ、そして絵本『こびとづかん』のぬいぐるみを発売する 写真提供/サン・アロー