陶芸作品やSNSの人気キャラなど、ぬいぐるみは多様化の時代へ
ぬいぐるみになるのは、平面のキャラクターだけではありません。
2013年には、スウェーデンの陶芸作家であるリサ・ラーソンの作品をぬいぐるみとして発売しました。「陶器は持ち歩くことができませんよね。独特の世界観を持つリサ・ラーソンの作品に、“普段から持ち歩けるもの”というコンセプトのもとアプローチし、ふわふわのぬいぐるみや雑貨を作っています」と関口社長。硬い陶器をやわらかいぬいぐるみにすることで、部屋に飾って眺めたり抱きしめてみたりと、楽しみ方が広がりました。
また、LINEスタンプなどSNS発のキャラクターのぬいぐるみ製作も、ここ数年で増えています。2015年にイラストレーターで漫画家のカナヘイさんの『ピスケ&うさぎ』のぬいぐるみや雑貨を発売し、2022年も新たなラインアップが登場。
世の中にさまざまなキャラクターがあふれる今、商品としてぬいぐるみを製作する基準はどこにあるのでしょうか。関口社長は「キャラクターを好きであり、ぬいぐるみを作りたいという情熱があること」と言い切ります。
「“売れそうだな”“売れているからぬいぐるみにしよう”というのは絶対にダメ。だって、それは責任を持たないということですからね。担当者がそのキャラクターを好きで、責任を持って最後まで売る意志があるかどうかを大切にしています。だからでしょうか、最近はこれまでなかった路線のものも増えています」
キャラクター商品で大切にしているのは作家さんに喜んでいただくこと
動物などのノンキャラから、アニメや映画、絵本などのキャラクター、そしてSNS関連のキャラクターまで、ぬいぐるみの世界は多様化しています。また、人の趣味嗜好(しこう)が広がり、小さな子どもが好むもの、高校生が好むもの、20代はこれ、年配の方はあれが好き……など、年代ごとに好みが細分化されてきているのだといいます。
キャラクターも私たちの趣味嗜好も変化がめまぐるしい時代ですが、サン・アローのぬいぐるみ作りへの思いは一貫して変わりません。
「ぬいぐるみを作るにあたって、手にするお客さんに喜んでもらいたいというのは大前提ですが、特にキャラクターものを作る時に一番喜んでもらわなければいけないのは、作家さんやデザインをされた方、著作権を持っている方です。大切な作品を平面から立体にして表現することは、作家さんにとってはなかなかイメージがつきにくいものです。熱意をお伝えし、作家さんに喜んでいただけるぬいぐるみを作ることを何よりも大切にしています」
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みなさんの手元にあるぬいぐるみにも歴史あり。時代の変遷とともに、ぬいぐるみも多様に発展していく流れには感慨深いものがありました。次回は「ぬいぐるみと人との関係」について掘り下げていきたいと思います。
【第2弾:「ぬいぐるみは生きている」が企業理念、老舗メーカーが取り組む“ぬいぐるみの病院”が届ける幸せ】
(取材・文/鈴木ゆう子)