私の声って変わってるの!?

「声の演技は初めてだったので、ひとつだけスタッフにお願いしたことがあって、“みんなと同じ日にやらせてください” と。女優さんとか俳優さんの場合は、みんなが声を入れたものに1人だけ別で録音する方が多いみたいなんですけど、私はその日に声優さんと一緒にやらせていただきたいってお願いしました。

 録音ブースに入ったら後ろのほうにたくさん椅子が並んでいて。で、自分のときに(マイクの)前に行って引っ込んで、の繰り返し。声優さんって自分の出番が終わったとしても、ずっとブースに残っていらっしゃるんですよ。その後のガヤ(雑踏の声など)もあるから残るって面もあるんですけど、みなさん中で(共演者の演技を)聴いていらっしゃるんですね。その一体感みたいなものがすごく新鮮で、何か守られている感じもありました。

 しかも、声優さんは惜しみなく、いろんな情報を教えてくださるんです」

──例えばどんなことですか?

台本のアタマに秒数を打ったほうがセリフが言い出しやすいよとか、ナチュラルであってももう少し声を張って舞台みたいにやったらちょうどいいよとか、(声を入れる前の)ビデオをもらったらこういうふうに練習するんだよとか、ぜんぶ教えてくれて

 しかも収録した後にはみんなで飲みに行くっていう、アットホームな感じが私はすごく好きでした。すごく支えられましたね」

──あらためてお聞きしますが、ご自分の声は好きですか?

「コンプレックスでした。やっぱり一瞬 “うわ!” って思います、自分の声は。特に『あぐり』のころはまだ子どもだったせいもあるんですけど、ちょっと舌足らずでアニメっぽい声になるので、“もっと普通の声出して” って音声さんに言われたこともありますし、“あ、私の声って変わってるんだな”と思ってすごく悩んだ時期がありました。

 もちろん『冬のソナタ』も合わないって言う方もいらっしゃるんですけども。でも、冬ソナをきっかけに “いい声ですね”って言われることがすごく多くなって。だから(自分も)好きになっていこうっていうふうに思いました」

田中美里 撮影/齋藤周造

 その声を生かして続けているのがラジオ番組のパーソナリティー。

 bayfmの『MORNING CRUISIN'』(土曜朝9:00〜)は2002年10月から続く長寿番組で、週末の朝、季節に合わせたさまざまな話題や情報を届けている。ゲストを招いたトークのほか、番組内のコーナー「私の本棚から」ではオススメの1冊を紹介。

「もう20年やっているんです。それこそ、冬ソナの前からです。番組があることによって、こういう本を読もうとか、こういう場所に行ってみようとか、生活に張り合いが出てくる。いろんなことを知りたいしおしゃべりしたいので、そういう意味で自分の視野を広げてくれたのがラジオかなって思います。

 いま私は帽子もデザインしているんですけど、そのきっかけもラジオで。帽子を手作りできる教室があるっていうのを紹介して、放送のあとスタッフと行きたいねっていうのが始まりでした。それから実際に自分で作ったり、その情報を聞いた方が “一緒に作りましょう”って言ってくださってブランドを立ち上げることになったので」

 帽子ブランドJin no beat shite cassie を2019年4月から展開。一見フランス語のようにも見えるブランド名は「ジンノビートシテカッシ」と読み、「のんびりしていってくださいね」という意味の故郷・石川県の方言を生かした造語だという。

Jin no beat shite cassieのインスタグラムから