スキルトイで広がるつながりが、人生をプラスにしていく
――オープンからもうすぐ1年たちますが、目指していた“街のおもちゃ屋さん”には近づけていると感じますか?
「お客さんとして地元の子たちもついてくれているし、学校が終わってから遊びに来てくれる子もちらほらいるので、自分がやりたかった街のおもちゃ屋さんに近づけていると思っています。そういう子たちに世界トップレベルの技を見せて刺激を与えることが、僕らにとって楽しいことの一つでもあります(笑)。僕らのことを知らない子どもたちがほとんどで、“なんでそんなにすごいの!?”と自然と興味をもってくれるんですよね。今年の6月11日には『スピンギアカップ』というイベントも開催して、すごく盛り上がってくれました」
――スピンギアカップとは、どんなイベントなのでしょうか。
「キャリア20年以上のコアな選手から地元の子どもまでさまざまな人たちが集まったのですが、ざっくり言うと、ヨーヨー・けん玉・コマ・ベーゴマをみんなで遊ぼう!というイベントです(笑)。それぞれのおもちゃの遊び方を体験する時間を設けて最終的にちょっとした大会を開くのですが、例えばベーゴマの大会の景品にお高めのヨーヨーを用意してみたりと、ヨーヨーしか遊んだことのない人が、その場でベーゴマを習って大会に出る流れをつくりました。
ヨーヨーをやってきた人はヨーヨーで得た知識・練習方法などをほかのスキルトイでも応用できるんですよね。ヨーヨーに限らず、どのスキルトイもコミュニケーションツールであり、人生をプラスにする道具だと思っているから、横のつながりを広げて楽しんでもらいたいなと考えました。
特にヨーヨー歴20年くらいのベテランはコミュニティがどんどん固まってしまいます。だからこそ、新しい刺激を受けて原点に立ち返ったり、違う発想を得たりしてほしかったんですよね。実際、高円寺の子どもたちが純粋に楽しむ姿を見て新鮮な気持ちになっている人もいたので、開催してよかったと感じています」
――子どもたちにとってもいい刺激になりそうですよね。
「スキルトイを通じてコミュニケーションが取りやすくなるのは確実にあると思います。今は世代問わず遊ぶこと自体が珍しいですし、自分が楽しんで遊んでいることを見せたり、できないことを教わったりする環境ってあまりないですから。
例えばテレビゲームとかを普通に遊んでいても、すごさが伝わらなかったりほめられることも少ないと思うんですよ。だけど、ヨーヨーやけん玉、コマといったスキルトイは、動きも大きくて技のバリエーションも多い。うまくできたら全力でほめてもらえる。ほめられたら嬉しいから遊びが続いていく……と、自然にいい循環が生まれていくんです。大人、子ども問わず楽しんでいるところを見るのは、僕らとしても刺激になります」
出戻りも大歓迎! 一緒に遊びを広め続けていきたい
――今後スピンギア高円寺店に来てくれた人たちには、どのように楽しんでほしいと考えていますか?
「スピンギアって、普通のおもちゃ屋さんに比べて置いてあるスキルトイが多く、各100種類ずつくらいあるんですよ(笑)。おそらく最初は圧倒されて何を買っていいのかわからなくなると思うので、まずは遠慮せずに僕たちスタッフに相談してほしいです。お客さんのニーズに合ったスキルトイを提案するのは僕たちとしてもすごく楽しいので、自分のレベル、やりたいこと、できる技を聞かせてもらったり見せてもらったりして、一緒に選べたら嬉しいです。今年秋にはイベントも開催予定なので、そちらも楽しみにしていてください」
――プロのみなさんに選んでもらえるのはとても心強いですね! そんなスピンギア高円寺店を、どのようなお店にしていきたいでしょうか。
「興味のない子に押しつけることはしないけど、少しでも気になる子には“こんな世界あるけど、どう?”と引っ張ってあげたいです。軽くふれるだけのライトな人も、本気でハマっているようなコアな人も両方巻き込んでいきたいですし、文化が継承していく場所としてスピンギア高円寺をつくっていきたいと考えています。そして、『真剣な遊び』の入り口としてお店をずっと続けていきたいですね」
――最後に、長谷川さんの夢を教えてください。
「子どもたちが大人になって、うちで働いてくれるのが僕の夢です(笑)。最近、ハイパーヨーヨー世代の人たちが出戻りしてくることが多いんですよ。社会人になって忙しくて一度はヨーヨーから離れたけど、子どもができて落ち着いたタイミングで戻ってくるような感じで。そういう人たちのためにも、僕らはスキルトイのランドマークとして変わらず居続けていきたいと思っています。ぜひ親子2代・3代で楽しんでもらいながら、みなさんと一緒にどんどん遊びを広め続けていけたら嬉しいですね」
(取材・文/阿部 裕華、編集/FM中西)
◎長谷川さんTwitter→https://twitter.com/taka_yoyo