念願は、ジェイソン・ステイサムが演じるジェームズ・ボンド!

──ジェイソン・ステイサムの吹き替えを担当していると、いろいろと騒がれませんか。

「彼のことが好きな人はとことん好きみたいですね。ぼくが声を当てているのをそういう人たちに知られて、驚かれたことは何度かありました。

 たとえば、京都に行くと、芸事にうるさい客が集まるようなバーがあるんです。そういうところで“役者やっています”とか“声優やっています”と言っても、“ああ、そうでっか”で終わることが多い。京都を舞台にしたドラマがあったり、太秦(うずまさ)のような撮影所があったりするので、役者は身近な存在なのか、こなれた反応なんです。

 ところが、“ジェイソン・ステイサムの吹き替えはほとんどやっているんですよ”と言うと、急に目の色が変わる(笑)。そういう経験はあります

──ジェイソンファンなのに、目の前で山路さんの声を聞いていても気づかないんですか。

「ほとんど気づかないと思います。吹き替えのときは役に入り込んでいるので、地声とは微妙に違っているのでしょう。それに、ジェイソン・ステイサムって、スクリーンを離れたときの口調も渋いんですよ。ふだんのぼくはチャラチャラしてるから、よけいに気づかれないと思いますよ(笑)。目をつぶって聞いてもらえば、“似てるかも”と思う人がいるかもしれませんけど」

山路和弘さん 撮影/山田智絵

──末長く吹き替えをしていきたい役者さんですか?

それはもちろん。だから、もっともっと大作に抜てきされてほしいと思っています。いっとき、“007をやりたい”というようなことをコメントしていたようなんですけど、いつのまにか消えてしまいました。ぼくからすれば、“ぜひ、やってくれよ”ですけどね(笑)。彼は007のイメージに合っていると思うし、ぼくも『ジェイソン・ステイサム版007』の吹き替えをしてみたいですから。

 彼はスタイルもいいし、とても格好いいんだけど、どうして“スキンヘッドと無精ヒゲとムキムキ”の組み合わせってモテるのかなあ。(同席した女性カメラマンに)ねえ、ジェイソン・ステイサムって、セクシーに見える? (女性カメラマンがうなずくと)やっぱりセクシーに見えるのか。男としての自信がそう見せるのかなあ、うらやましいなあ(笑)」

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 ほぼ全作品の吹き替えを担当し、ジェイソン・ステイサムは山路さんの“ハマリ役”の1つですが、声が似ているだけでなく、自然体でアフレコに臨んでいる雰囲気が伺えました。それなのに、ご自分の声が嫌いだなんて、意外ですね。次回は、『X-MEN』シリーズなど多くの作品で吹き替えを担当したヒュー・ジャックマンを中心に話を伺います。

◎第2回:山路和弘さん#2「ヒュー・ジャックマン本人のアフレコ映像を見たとき、心の中で謝ったよ」(9月29日19時公開予定)

(取材・文/キビタキビオ)

《PROFILE》
山路和弘(やまじ・かずひろ) 1954年、三重県生まれ。1979年に劇団青年座に入団後、舞台を中心にドラマ、映画で活躍。声優としても洋画の吹き替えを中心に多数の役を担当している。歌唱力にも定評があり、2011年に出演したミュージカル『宝塚BOYS』『アンナ・カレーニナ』で第36回菊田一夫演劇賞(演劇賞)を、2018年には第59回毎日芸術賞を受賞。近年はアニメーションの出演も多く、『進撃の巨人』『ONE PIECE』『SPY×FAMILY』などの人気作品にも出演。現在、放送中のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』では、前田善一役で出演している。