食パンは実は和食に合う! 料理との合わせ方
──そうなんですね。あと、日本ではパンを副菜的にとらえることが多いですが、料理との合わせ方も知りたいです。
「パンの種類は大まかに、カレーパンや具材が入っているような惣菜パン、あんパンのような菓子パン、あとはフランスパンやカンパーニュのような食事パンに分かれます。料理に合うのは食事パンで、洋食だったらフランスパンでもいいでしょうし、和食には実は食パンが合うんです。あと、バゲットは和食でも洋食でもなんでも合うと思っていて、それは白い小麦粉と酵母と水と塩だけを使ったすごくシンプルなパンだからなんです。きんぴらごぼうとか、肉じゃがにも合いますよ」
──カンパーニュは洋食に合いそうですね。
「発酵種の酸味があるカンパーニュは、肉料理みたいなしつこいものと一緒だとすごく合うんですよね。例えばソーセージは一般的にコッペパンに挟むイメージですけど、カンパニーニュにソーセージとチーズを乗せて焼くのがおすすめです。小麦の味がしっかりしているから、具材の味に負けない。最高に合うと思います」
──具材とも相性がよいのですね。
「ソーセージドッグのお店を挙げると、新宿のルミネエストの地下1階にある『ベルク』の『ベルク・ドッグ』も、パンがプレーンな感じなのが大好きです。外国のホットドッグスタンドで食べるようなテイストに近いですよね。ビールで流し込んでいく感じが好きです」
──では、パンをおいしく食べるおすすめの方法はありますか?
「おいしく食べる方法は、買ってすぐ食べること! 例えばフランスに行ってよく見かける光景は、バゲットを買って店を出たらすぐにかじり出すんですよ。バゲットって乾燥しやすくて風味も飛びやすいので、フランス人は前日に次の朝のパンを買うんじゃなくて、自分の近くの店に当日の朝、買いに行くんです」
──買ったパンを食べきれなかったら、冷凍保存するといいのでしょうか。
「冷凍はセカンドベストですね。その日に全部食べるのがいちばんですけど、ひとり暮らしだったら一度に全部食べるのは無理なので、計画的に食べるのをおすすめします。例えば食パン6枚入りだったら、1枚目はすぐ食べて、2枚は翌日食べる。3日目以降の分から冷凍する」
──冷凍に向いているパンはありますか?
「冷凍に向いているのはベーグルですね。気泡が少ないから冷凍しても味の変化が少ない。ベーグルが好きな人は通販とかで一気に購入して冷凍して、毎日トーストして食べる方も多いです」
──なるほど。ちなみにちょっと前にブームになった高級食パンブームって、池田さんはどういうふうに見ていましたか?
「今までパンに興味を持ってない方がテレビとかで見て、興味を持ってもらう機会だなって感じましたね。ブームによってパン好きの裾野を広げてもらえた。すごくたくさんの砂糖が入っている、リッチでケーキに近いような高級食パンは、最大公約数でおいしいと思ってもらえますから。逆にハード系のパンは、おいしい食べ方が必要なので難易度がちょっと高い。どんな趣味でも難易度が高いものと低いものがありますが、そういう意味では食パンは難易度が低いと言えるかもしれないです」
──パンのおいしさがわかるようになるためには、なにかコツがありますか? 例えば、飲み屋さんでは、ポテサラを頼べばその店の良しあしがわかるという説もありますが……。
「そういう法則ってパンにもあると思っています。パンの種類はなんでもいいのですが、自分が好きなパン、例えばクロワッサンなら、いろいろな店でクロワッサンを食べていく。すると座標軸みたいなものができてくるんです。毎回、別の種類のパンを食べていると散漫で座標軸ができにくいんですけど、同じ種類のパンを食べ続けていると明確に違いがわかるようになってきます。クロワッサンで言うと、皮がサクサクしているのに中はもっちりは結構、珍しいなとか。そういう見方ができてくると、パンがより楽しくなってきますよ! 」
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いかがでしたか。パンが食べたくなってきませんか? 第2弾では、池田さんおすすめの“街のパン屋さん”をご紹介します!
(取材・文/池守りぜね 撮影協力/小杉湯となり)
〈PROFILE〉
池田浩明(いけだ・ひろあき)
ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰。日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。NPO法人新麦コレクション理事長。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)、 『僕が一生付き合っていきたいパン屋さん。』(マガジンハウス)など。