──単に「クラフトビールのお店を始めた」という話だけではなく、自分で大工さんを見つけて、材料を発注して、予算に合わせて建物のリフォームをしたなんて、ただ者ではありません。やはりプロデューサーとしての手腕があってのことであり、今までの経験が生かされているように思います。

このまま映画だけを作っていたら出会えなかった人もいて、自分の居場所も作れましたし、ずっと映画の世界に閉じこもっていたよりも、むしろよかったかもしれません

西口典子さん 撮影/近藤陽介

──コロナの影響で仕事がうまくいかなくなったけど、何をしたらいいのかわからなくて悶々(もんもん)としている人もいると思うのですが、そんな人たちに何かメッセージはありますか?

とにかく1回バカにならなきゃダメ。狂ってみるって大事なんですよ。私も店をオープンするまでは、とても怖かったです。ビール作りは楽しいのですが、お店を開けても誰も来なかったらどうしようって。

 でも、オープンしたら、近所の方も来てくださって、“ずっと工事中で何を作っているんだ? と思っていた”と言われました(笑)。そして、クラフトビール屋(という珍しいお店)であることに驚いてくださった方も。そういう意味でも、“クラフトビール”というジャンルを選んでよかったです

1階はスタンディングバー、2階はレンタルキッチンに

 1階はクラフトビール醸造場併設のスタンディングバー、2階はプロ仕様のレンジが設備されたレンタルキッチンになっていて、今後、お店をやってみたい人という人に貸し出すのだとか。前は中華料理屋さんだったなんて想像つかないほど、木のぬくもりを感じさせるハイセンスな内装です。この店舗自体が、「西口さんの作品」のように感じました。

1階はスタンディングバーで、左奥の扉の奥が醸造所になっている 撮影/近藤陽介
2階はレンタルキッチンとして貸し出している 撮影/近藤陽介

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 ビールの師匠、店舗の物件、大工さん……すべて自分で見つけたというのは、すごいことです。それだけ、日頃からアンテナを張っているから、そんなラッキーな出会いが生まれるのでしょう。しかも、プロに任せるだけでなく、できる限り自分でもDIYをすることで、費用を抑えるだけでなく、面白い経験、エピソードが生まれています。西口さんのお話を伺っていると、どんなことも「結果」だけでなく、「過程」が人生を彩るのだと感じます。

 次回は、「西口さんがクラフトビール屋を始めたことでわかった、ビール作りの難しさと奥深い魅力」について深掘りしていきます。

(取材・文/加藤弓子)

〈店舗情報〉
■OURDAYs Brewery & Club house
住所/東京都渋谷区笹塚3-40-1
営業時間/月曜~木曜:18~23時、金曜:18~24時、土曜:15~24時、日曜:15~22時
定休日/奇数週の火曜日
レンタルキッチン/
金曜〜週末にかけて2Fキッチンをレンタルできる。料金は1日1万5000円。3日間、帯で借りる場合は3万5000円。ビールは1Fのクラフトビールを利用可能。
(10月15日から、土曜日のみの営業で「スパイスカレーとおばんざい料理」を提供するチェルシー食堂さんの営業が始まります)

インスタグラム/ourdays_brewery
Facebook/www.facebook.com/OURDAYs-Brewery-Club-house-103250589033440

〈PROFILE〉
西口典子(にしぐち・のりこ)
映画プロデューサー。OURDAYs Brewery & Club houseオーナー、クラフトビールブリュワー。映画『女の子ものがたり』(森岡利行監督、2009年公開)、『人生、いろどり』(御法川修監督、2012年公開)、『ピース オブ ケイク』(田口トモロヲ監督、2015年公開)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(白石和彌監督、2017年公開)などをプロデュース。