違反者を取り締まるよりも有効な方法
それでは答えです。
ストックホルムでスピード違反者を減らすことに成功した方法。
それは……。
【答え】制限速度を守ってくれる優良ドライバーに、専用の宝くじを配布した。
なんと、スピード違反をしないだけで、宝くじがもらえるのです。
これはどう考えてもお得ですよね。
この「専用宝くじの配布」を導入したことによって、車の平均速度は22パーセントも下がったそうです。多くのドライバーが宝くじ目当てに、安全運転に切り替えたというわけです。
えっ? 「そんなことをしたら、宝くじの賞金で財源が必要になってしまうのではないか?」ですって?
ご心配なく。この宝くじの賞金は、スピード違反した人たちの罰金でまかなったのだそうです!
つまり、違反をした人たちのお金(罰金)を、違反しないドライバーたちへのお小遣い(宝くじの賞金)に回したというわけ。いや~頭がイイです!
ちなみにこの宝くじ。当せんすれば、最高賞金は日本円で20万円を超える金額というのですから、なかなかオイシイ。これなら、「制限速度を守ろうか」という気になりますよね。
この「交通違反した人を罰するより、守っている人に注目する」という発想のプロジェクト。実は日本にもあります。それは、放送作家の小山薫堂さんが発起人となり生まれた、『JAPAN SMART DRIVER』(『TOKYO SMART DRIVER』より、2017年名称を変更)プロジェクトです。
これは、首都高速道路の事故減少を目的とする啓蒙(けいもう)キャンペーンで、ごく簡単にいえば「優しい運転をしてくれているドライバーを褒めよう!」というもの。
違反を取り締まるのではなく、素晴らしい運転をするドライバーを褒めるためのパトカー「ホメパト」を走らせたり、「安全に走ることこそカッコイイ」と共感してくれるドライバーに、JAPAN SMART DRIVERのロゴマークである「ピンクのチェッカーフラッグ」を車に貼ってもらったり……などが具体的な活動内容。
現在では、二輪車を対象とした『TOKYO SMART RIDER』という姉妹プロジェクトなどへと広がりを見せています。
ちなみに、デザイナー・水野学氏の手によって作られたJAPAN SMART DRIVERのシンボルパターンである「ピンクのチェッカーフラッグ」には、「ドライバーは、無事に家へ帰ることがゴール」という願いが込められているとのこと。
ルールを守ってもらいたいとき。違反した人を罰するのではなく、違反していない人にメリットを与える。この発想、効果絶大です!
(文/西沢泰生)