日本エンタメの海外展開のカギは、作り方ではなく「広げ方」

──日本コンテンツをもっと世界へ広げていくためには、これから何をすべきなのでしょうか?

2つの方向性があると思っています。

 1つ目は、コンテンツ力の強化に徹して、韓国や中国、アメリカなどチャネル(※)がすでにある外資メディア(Netflixなど)と直接組むこと。2つ目は、作品別にファンを固めて複数メディアを横断できる“キャラクタープラットフォーム”を生み出すことです。

※チャネル:集客するための媒体や経路のこと

 日本のテック企業(※)が海外チャネルを作れていたらよかったのですが、中韓のテック企業に比べてずいぶん後れを取っているんですよね。従来は国内向けに、テレビ局も出版社もレコード会社もコンテンツを出したらそれで終わり。利益は最初だけというのがスタンダードでした。メディアもテックも国内が盤石だったために海外にそのチャネルを広げず、そこに従属するようにコンテンツ企業・クリエイターが制作だけに徹してしまっていた。8割方のエンタメ系企業が、“海外事業に力を入れないと......”という流れになっていますが、実際に積極的に推進しているのは1〜2割くらいしかない印象です

※テック企業:ITテクノロジーを活用してビジネスを展開している企業のこと

──なぜエンタメ業界は海外進出に踏み切れないのでしょう。

いちばんわかりやすい理由としては、経営陣の海外経験が少ないことですねここは中韓企業とは愕然とするような違いがあります。みんな、海外重視というのは頭ではわかってますが、そこに手ざわり感がないんですよ。海外でないにしても、新規事業を一から作り上げた経験者がいれば結構違うんですが。

『SmartNews』や『メルカリ』のように、トップの強い意思で海外展開を推進し続けるような企業が、エンタメのメディア・コンテンツ系にももっと生まれてきたらと思います。とはいえ優先されるのは、クリエイター側が直接外資のメディアと交渉できる経験を積んでいくことだと思います。せっかくコンテンツ力は強いので、そこは他人任せにするべきではない。問題なのはコンテンツ力でなく、圧倒的にプロモーション不足のほうですから

──日本のコンテンツ力を上げるのではなく、日本コンテンツのプロモーション力が重要なんですね。

「はい。海外はIP(※)が少ないから、海外のプラットフォーマーは日本コンテンツをもろ手を挙げて取りに来てますよ。でも窓口がわからない、コンタクトしても遅い、意思決定が見えなさすぎる、などなど。まずはそこの改善とダイレクトな外資協業ですね。

 例えば、韓国のゲーム会社・ネットマーブルのアプリゲーム『七つの大罪 〜光と闇の交戦〜』は、それまでの国内企業が出してきた同作品ゲームとは全然違う、日本外の市場が大半の売上になっています。それをきっかけに原作マンガの売上も北米で伸びるわけです。現状はプロモーション力に不足があるものの、今後そこを補うことができれば、日本のコンテンツはまだまだ世界へ広がるのではないでしょうか

※IP:知的財産。Intellectual Propertyの頭文字をとった用語

(取材・文/阿部裕華、編集/FM中西)