大事にしているのは「期限を決めて取り組むこと」と「余白を持つこと」
──フィンランド好きで北欧関係の企業に就職なんて夢のようですが、『北欧こじらせ日記』によると、その会社は2年でなくなることになってしまったとか。
「そうなんです。会社がなくなるという宣言を受けたあと、ほかの企業で3年半の期限がある契約社員として営業職に就いて“正社員にならなきゃ”と焦っていたのですが、そんなときに上司が言ってくれたことが心に残っています。
“校庭を走ってこいって言われても、何週走っていいのかわからなければ苦しくなるし途中で手を抜くけど、3周本気で走ってこいと言われたら、その3周は本気で走りきるよね”。この言葉で、人生の節目を自分で短距離走にしてしまう生き方もあるんだと学びました」
──具体的にはどういうことですか?
「永遠に続くと思っていたら絶対にしんどくなるから、大事なことは期限を決めてやろうと決意したんです。例えば、日本では3年間、寿司修業をしたのですが、ずっと“修業の1年後にはフィンランド移住!”と決めていたので、つらいことがあっても頑張れたし、英語力など自分に足りていないことも見えてきました。それに、長く続けすぎると熱が冷めることもありますよね。
その決意はずっと持っていて、フィンランド移住の夢を叶えたから永遠に今の状態を続けるのではなく“まず3年やってみて、その先はそれから考えよう。新しいことに興味が出たらそれに向かっていってもいいし、フィンランドでの寿司職人を続けてもいいし”と思っています」
──夢を叶えたらそれでおしまい、ではないのですね。寿司職人の仕事、漫画制作、フィンランドでの慣れない生活など、お忙しそうなchikaさんですが、ほかにマイルールはありますか?
「もうひとつ決めているのは、余白を持つことです。1週間のうち1日は予定を何も入れない日を作って、やりたいことを当日の朝に決めるんです。“今”を楽しめないと苦しくなる気がするから、忙しくなりそうだったら、あえて何もしない日を入れます。
ただ、フィンランドで寿司職人を初めてから2週間目、お店で働く日本人が私しかいなくなって、新しい環境で1日13時間労働、休憩15分の日々が続いたことがありました。休日は寝てばかり、夢の中でも魚をさばいて、起きると仕込みのことを心配するうちに、疲れすぎて体調を崩してしまって……。日本でもこんなに働いたことはなかったですね」
──フィンランド移住の夢を叶えてからも大変なことがあったのですね……! インタビュー第2弾ではchikaさんが日本にいるとき、そして移住してから経験した悩みや苦労をどうやって乗り越えていったのかについても聞かせてください。
(取材・文/若林理央)
【PROFILE】
週末北欧部 chika ◎大阪府出身。フィンランドが好きすぎて12年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。移住のために会社員生活のかたわら寿司職人の修業を始め、2022年4月、ついにフィンランドで寿司職人に! モットーは「とりあえずやってみる」。好きなものは水辺、ねこ、酒、1人旅。著書に『北欧こじらせ日記』『北欧こじらせ日記 移住決定編』(ともに世界文化社)かもめニッキ(講談社)など。
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