時には“寄り道”も大事。中国赴任を経験し“どこでも生きていける”と確信できた

──年齢や夢にかけた時間について悩んだときはどう乗り越えましたか?

「私は今年34歳になるのですが、励まされたのは『北欧こじらせ日記 移住決定編』にも出てくる50歳でフィンランドに移住した方と、寿司学校で出会った、60代でセカンドキャリアを考えて学び直しをしている方の存在でした。

 そういう先輩たちを見ていると、人は何歳になっても新人になれるし、新しいことが始められると思えたし、これはフィンランド移住に限った話ではないですよね。自分自身、何歳になっても、新しい興味が出てきたら学び直せる。将来を考えても期待が膨らみます。きっと、何をするにも遅いということはないと思うんです。

 悩んでいる方は、私にとっての50代や60代の先輩たちのような“マイヒーロー”を見つけると励みになるし、勇気づけられると思います。世界は広いので、絶対に見つけられます」

ラップランド地域で見た氷塊。日本ではまず見られない、自然の神秘を感じられる光景だ 写真:本人提供

──chikaさんはフィンランド移住のだいぶ前に、お仕事で中国赴任も経験していますよね。フィンランドと中国、そして日本は言語も文化も異なりますが、赴任の話があったときはどんな気持ちでしたか?

計画どおりに人生を進めようとして夢を追い続けていると、次はこれをして、その次はこれをして……というふうに、生きることがタスクになってしまいます。実現できないタスクで人生が埋まっているのがしんどいなと思っていたころ、残業中に先輩から“中国赴任の話があるけど受けてみない? 15分後には締め切りだから”と電話がかかってきたんです。

 そこで、ふっと力が抜けて、気持ちもすっと楽になりました。

 人生にはいろいろな道があるし、夢からそれた寄り道も経験になって、その経験を好きなことと掛け合わせると自分ならではのキャリアになります。先ほども言ったように、計画しすぎないことによって、夢との心地よい距離感を作れるのではないでしょうか。

 中国赴任は自分にとって予期せぬ出来事でしたが、そういった考え方を得るきっかけになったし、“あえて寄り道を取り入れてみるのも今後の人生のためになるかもしれない”と思えました」

──中国赴任は1年間でしたよね。中国での生活が始まってからはどうでしたか?

「想像以上に楽しくて、“私はどこにいっても生きていける”と確信できた1年間でした。中国は日本ともフィンランドとも異なる文化で言葉が通じないのですが、友達もできましたね。

 赴任中、日本に一時帰国したあと中国に戻るたびに、部屋のどこかが壊れているのも面白かったですね。例えばカーテンレールが壊れたときは、“夜景が見られていいね”と友達とキャンドルナイトをしました。

 こんな感じで、“どこに行っても生きられるのが私の強さ、スキルのひとつなのかもしれない”と中国赴任によって気づけたんですフィンランドに行っても大丈夫かもしれないと考えるようになりました。時には中国赴任のような予想外の道を歩んでみることを、今も大切にしています

フィンランド郊外のサマーコテージにて、たき火でソーセージを焼いてビールで乾杯。自然に囲まれてゆったりとした時を過ごす中で、心も洗われそうだ 写真:本人提供