②スケール(縮尺)の遊び
モルカーの羊毛フェルトのパペットに対して、物語に登場する人間たちは、ジオラマ用の人形が使用されています。ここで注目したいのは、(セット以外の)小道具です。登場する人物たちが持つ道具は、その縮尺に合わせて作られたものだけではなく、パペットを操作している人が現実の世界で使っているもの(あるいは、現実で使われるものと同じサイズ)がある点でしょう。モルカーを見ているとミニチュアライズした世界に入り込んだような独特な感覚を味わえるのは、このようにスケールが混在しているためです。
たとえば、第1期では指輪、DS編では免許証といった小物類が、この物語の中では明らかに大きなサイズ感のまま使われ、しかもまったく違和感のないものとなっています。ストップモーション・アニメでは、セットや小物類とパペットのスケールが比例して制作されることが多い中、スケールをあえて遊ばせる試みが見られることもモルカーの特徴でしょう。
さらに第1期では、モルカーに人が乗車しているシーンで、見里監督をはじめとする身近な方たちがキャストとして登場するという、実写表現も活用していました。こうした演出は車の渋滞や、ゴミのポイ捨てなど、身近な社会問題を取り込んだ風刺的な描写も引き立てていました。