日本で起こる外来種の問題。ゴールは本来あるべき生態に戻すこと
──そんなことが起こっているんですね……。さまざまな環境問題に取り組まれているハットリさんですが、今いちばん関心があるのは何ですか?
「外来種問題です。今年4月から9月まで“半年間 自分で捕獲した外来種で作った料理を毎日食べる生活〜1日1食外来種〜”というチャレンジをしたのですが、本当に根深い問題だなと感じました」
──外来種というとブラックバスやブルーギル、アメリカザリガニとかですよね。
「そうです。言葉の定義だけで言うと、外来種は“人間の手によって生息地から本来生息しない地域に持ち込まれた生物”で、年代・国内外は問わないもの。問題になっていない外来種もあるんですよ、例えばお米とか。じゃあ何が問題なのかというと、生態系を崩したり産業に被害を与えたりする場合、悪影響があると見なされます。
アメリカザリガニで言えば、増えることで水草が極端に減り、他の生き物が生きられなくなってしまうと防除(※)する動きになります。ただ、最近は増えたザリガニで町おこしをしようとする動きも増えていて、ザリガニを使ったメニュー開発をしているところもありますが、このやり方が浸透するのは結構危ないなと思っています」
※防除(ぼうじょ):生物による被害を防ぐため、その進入の防止や個体の管理などを行うこと
──でも、防除自体はよい動きなのでは?
「産業としてうまくいくと養殖する流れになりますが、さまざまな原因により養殖池から外来種が脱走した事例が過去に何件もあるんです。僕も外来種を食べて“おいしいです!”と発信する身ですが、環境保全を最前線でしている人にとって、いい発信ではないのではないかと思うこともあります。悩んだ末の結論が、本来あるべき生態に戻すことをゴールに、食べるのはあくまでその過程というスタンスで発信しようと。そこまで考えたうえで伝えるのが僕の責任かなと思っています」
──ただ発信するだけではすまないんですね。
「防除の観点で言えば、“食用に人員や時間を割(さ)かずに”一匹でも多く駆逐したほうが効率ははるかにいいです。でも僕の場合、獲って食べないまま殺すことができなくて。殺めたからには食べなきゃという姿勢が釣りで沁(し)みつきました」