ハマったきっかけは、まさかの"ゴミ箱のデザイン"
――いや、ちょっともう冒頭から想像を絶していました。そもそも何がきっかけでそこまでTDRにハマったんですか? 幼少期からよく行かれたとか?
「いえ、小さいころはまったく興味なかったんですよね。別に遊園地やアトラクションが好きではなかったし、ディズニーキャラクターにも興味はありませんでした。
きっかけは高校生くらいだったと思うのですが、友達と東京ディズニーランドに行ったんですけど、その"作り込みの細かさ"に衝撃を受けたんですよ」
――どういった部分に衝撃を?
「最初に気づいたのはゴミ箱でした。TDLではテーマごとに7つのエリアがあるんですが、それぞれでゴミ箱のデザインやカラーリングがまったく違うんですよ。いま考えたら“なんでゴミ箱にここまで感動したんだろう”って思うんですが、当時は“これはすごい。徹底されているな”って、驚いたんです。
それで注意深く見ていくと、地面の色も違うんですね。例えば1860年代に始まったアメリカ西部開拓時代をイメージした“ウエスタンランド”では茶色の地面なんですが、未来をイメージした“トゥモローランド”では青色になっている。地面ひとつとっても、まったく違う世界観に没頭できるように徹底しているわけです」
――なるほど……。
「それで音楽を聴いてみると、もちろんBGMも違うわけですよ。すごいのが、エリアの境目で音楽が混ざらないようになっているわけです。“ファンタジーランド”と“ウエスタンランド”は隣接していますが、必ずどちらかの音楽しか聴こえないように設計されています。
このあたりの工夫を見て“あ、これはちょっとレベルが違う”と、めちゃめちゃ感動してわくわくしたのを覚えていますね」
――では、そこから"TDL沼"にハマっていくわけですか?
「いや、その衝撃はすごかったんですが、当時は今と違って“ひとりディズニー”なんて行けるような雰囲気じゃなかったんですよ。“ひとりカラオケ”ですら、ちょっと恥ずかしい、みたいな風潮でした。
だからソロでは行けない。でも学生でお金もないので、友達を何回も誘うわけにはいかないじゃないですか。だから“また行きたいのに”と、悶々(もんもん)とした日々を過ごしていましたね(笑)」
――なるほど。そこでいったん喪失体験をされているわけですね。
「そうですね。で、そんなもどかしさを感じながら大人になるんですけど、そこでTDR好きの友達と知り合ったんですよ。ふたりで年間パスポートを買ってからは、本格的に通うようになりました。
年間パスポートがあると、時間が足りなくてアトラクションに乗れなくても“また来たときに乗ればいいや”って、何回も通えるんですよね。だから自然と何回も何回も通うようになっていくんです(笑)」
――なるほど……年パスは罪深い(笑)。やっぱり通う中で新たな気づきはありましたか?
「もちろん毎回発見の連続でしたよ。有名どころでいうと、TDRの各エリアでは、基本的に“他のエリアが見えにくいように”設計されています(例外エリアもあり)。例えばTDSの『メディテレーニアンハーバー』という地中海をコンセプトにしたエリアからは『ポートディスカバリー』という未来の世界をイメージしたエリアは見られません。必ずその世界に没頭できるようになっているんです。こうした設計の細かさに毎回感動を覚えていました」
――さすが、徹底していますね。同じテーマパークで連想するのだとユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)ですが、コンセプトがまったく違う……。
「そうですね。USJはTDRに比べて"攻めの姿勢"ですよね。アトラクションもスリリングですし、ハロウィンイベントのゾンビとか"ガチ"ですからね(笑)。
その点、TDRはディズニーのブランドもありますし、"優等生"だと思います。だからこそ、バックグラウンドストーリーや設計がしっかりしている。そのプロ意識というか、おもてなしの心に毎回興奮していたら、いつの間にか1000回も通ってしまったという(笑)」