いま、社会現象を巻き起こしていると言っても過言ではない『silent』(フジテレビ系)。川口春奈さん×目黒蓮さん(Snow Man)の切なく温かい恋路を描いた本作は、見逃し配信の累計再生回数がフジテレビ歴代最高になるなど、大きな話題を集めています。
最近は、あいさつ代わりに「silent、やばくない?」と交わされることも増えてきて。筆者も、日々ブームを感じています。
令和のモテを体現する女子“青羽紬”
そこで、今回ピックアップしたいのが、本作の主人公・川口春奈さん演じる青羽紬について。紬って、久しぶりに登場した王道ヒロインのような気がしませんか? 正直、“彼女に共感できるか?”と聞かれたら、できない。
なぜなら、モテの王道を歩いてきた女の子だから。
そのモテも、並大抵のモテではないんですよね。だって、高校時代に彼氏ができたことで、学校中に失恋パンデミックを起こしてしまうって、よっぽどじゃないですか…? そこまでのマドンナって、学年にひとりいるか、いないかですよね。だから、そもそも視聴者が共感できるヒロインではないのです。
ただ、令和のモテってこういうことなのかも……と学ぶポイントはたくさんあって。なんだろう、紬ってあざとくないんですよ。一つひとつの行動をじっくり見ると、かなりあざといのに、あざとく見えない。なんなら、ちょっぴりがさつに見えるくらいで。
だから、目黒蓮さん演じる・佐倉想に、「最近、覚えた手話教えて」と聞かれて、「片思い」と返しても、“うわぁ……計算高い!”とならない。“無意識にこういうことができちゃう女の子って、強いよなぁ”と感服させてしまうんです。それに、紬って同性からの支持も熱いんですよね。
比べて見えてくる平成モテ女子の完璧さ故の危うさ
紬がナチュラルモテ女子だとしたら、その対極にいるのは『やまとなでしこ』(フジテレビ系)の松嶋菜々子さん演じた・神野桜子さんや、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)の石原さとみさん演じた・紗絵子さんでしょうか。
このふたりは、とにかくモテに対する執念がすごい! 自分が高根の花であることをしっかり自覚しているし(紬は、高校の担任から“自覚のないモテるやつ”と言われていました)、美貌を全力で生かしている。
いわゆる、女子会で悪口を言われるタイプのヒロインなんです。桜子さんや、紗絵子さんは、自らのモテテクニックを周囲に享受することで、かろうじて女子人気を得ていましたが……。
その一方で、紬はどんなにあざとい行動をしても、悪口を言われることはないと思います。なぜなら、“紬みたいないい子を嫌う=悪”みたいな方程式が、確立されているから。それに、彼女はただ素直に生きているだけだから。
また、紬を見ていると、“令和のモテは完璧じゃなくていいんだなぁ”と思わされます。ファミレスで、男性にソファ席を譲らなくていいし、「水、持ってくるね」と言わなくてもいい。
実際に紬は、いつもソファ席に座るし、飲み物も相手の男性に取ってきてもらう。たぶん、平成のモテヒロインたちは、真っ先に席を立ち、“気を遣える私”をアピールしていたと思うんです。
そういったところも含めて、『silent』は新しいなぁと感じます。紬のファッションが、いつもゆったりしているのもいいですよね。寒いのに、“モテるために!”と我慢をしてミニスカートを履くこともない。無理をしないモテが、令和のいまハマるのかも……と思いました。
確かに、ありのままの自分を好きになってもらったほうが、恋愛も長続きする。「コーヒーとココア、どっちがいい?」と聞かれて、「コンポタ!」と返せるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだけど……。全女子の理想が詰まっている紬の恋愛術を学びながら、『silent』のストーリーも楽しんでいきたいと思います。
(文/菜本かな、編集/本間美帆)