ほかにも巨匠ミシェル・ブランやオリビエ・ロランジェなど、後世に残る料理を作るシェフに憧れるという高橋シェフ。日本人シェフは、技術は高いが、センス的になかなか評価されない一面もある。

後世に何かを残したいという思いは強くあります。誰かが自分のレシピをまねして作ってくれれば本望です。料理には、無限大の可能性があって、あれだけ修業したつもりでも、これでもか、これでもかとおいしいものを追求していけますよね。果てなど、ないのではないでしょうか。料理に飽きることは、まったくないんです。知られざる味を探求したいとか、自由な食べ方を模索したいなど、まだまだ求める要素は尽きないですね

丁寧に盛りつける高橋シェフ。まなざしは真剣そのもの 撮影/齋藤周造

高橋シェフが考えるフードロス対策とは? 今後は「また海外で挑戦したい」

 レストランに求められる条件が多様化する昨今、“持続可能”を標榜するレストランも多い。

 コロナ禍で高橋シェフは、生産者から廃棄される食材を買い取り、「ロスフードを使った惣菜BOX」のテイクアウトと通信販売を行った。以前から取り組んでいた発酵や熟成の技術を活用することで、食材を長期的に使用して新しいメニューを考案してきた。

「そもそも希少価値の高い素材や、誰も使っていない素材に対して興味が強かったのですが、一般的には価値がないと思われていたり、破棄されていたりする食材にも注目し、うまく生かすことができれば、新しい食材を開拓しつつ、フードロス問題に貢献できると考えています。もともと、この店でのフードロスは、ほぼないんです。肉料理でどうしても出てしまう端肉も、今回紹介する料理のように鴨の首に詰めたり、賄(まかな)いで使い切るようにしています。生産者もそうした考えを大切にしている方と取り引きをしています」

「未知なる素材の探求」がライフワーク。時代を超えて生き残る料理が、やがてクラシックと呼ばれるのであれば、哲学でもお皿でも何か残したい、と高い目標を掲げている。

「また海外で挑戦したいですね。自分の料理を食べてくれた方が、どのような評価をしてくれるのか、勝負してみたい。多くの人に自分の料理を伝えていきたいです」

高橋シェフの挑戦はまだまだ続きます! 撮影/齋藤周造