ついに二代目「江戸家小猫」に。父に厳しく言われた“芸人としての気遣い”

 2年後の’11年、二代目「江戸家小猫」を襲名した。

「そのとき父に言われたのは、“芸は自由に作っていけばいい、そうやっているうちに自分の色が出てくる”ということでした。確かにそうで、何度か、父のネタをそのままやってみたことがあるんです。でも、借り物みたいで気持ちが悪いんですよ。やはり『芸は人なり』なので、親子であっても違う。そして、人間としての自分をきちんと形成しないと芸もよくならないと痛感しました。当時、父が厳しく言ったのは、“寄席の楽屋の中で、どこにいたら邪魔にならないか。それだけはきちんと考えなさい”と」

 狭い楽屋には、さまざまな芸人さんがいる。前座さんから大御所の師匠まで、いろいろな人が激しく出入りを繰り返す楽屋で、自分がどこに立っていれば邪魔にならないか。それは「場の空気の流れを読む」ことにつながっているのだ。

「まして私は34歳、しかも猫八の息子ということで周りが気を遣ってくれてしまう。でも私がいちばんの新人なのだから、人に気を遣わせてはいけない。“お前の態度ひとつで決まるよ”と言われました」

 根っからまじめで控えめで明るい。そんな性格が、楽屋うちでも客席でも愛されて今がある。

 さらに、勉強熱心でもある小猫さんは現在、全国50以上の動物園とかかわりを持ち、動物の鳴き声を身近で研究するだけでなく、シンポジウムでの登壇などもしているという。インタビュー第2弾では、動物園との深い縁についてや、父が病に倒れたときのことなどを詳しくお聞きする。

第2弾も、お楽しみに! 撮影/山田智絵

(取材・文/亀山早苗)


【PROFILE】
江戸家小猫(えどや・こねこ) ◎1977年、東京都生まれ。高校在学中にネフローゼ症候群を患い、12年の闘病生活を乗り越え、'09年に立教大学大学院21世紀デザイン研究科に入学。同年、父である四代目猫八に入門し、大学院修了後、二代目「江戸家小猫」を襲名。都内の寄席を中心に、全国各地での講演会などで活躍。ウグイス、カエル、秋の虫など江戸家伝統の芸はもちろんのこと、テナガザル、ヌー、アルパカなど鳴き声を知られていない動物のネタも数多くある。日本全国の動物園とのつながりから、動物園イベントに出演する機会も増えている。'23年3月に五代目「江戸家猫八」を襲名予定。

◎江戸家小猫 公式ウェブサイト→https://edoneko5.info/
◎江戸家小猫 公式Twitter→https://twitter.com/edoneko5

☆2022年12月28日『年忘れ二ツ目会』、12月30日『第690回 紀伊國屋寄席』、2023年1月3日『笑客万来 新春寿寄席』ほか詳しい出演情報は公式サイト内の情報ページ(https://edoneko5.info/free/stage)をチェック!