前乗りして情報収集を欠かさない
立川さんが仕事にあたって必ず実践しているのが「現場への前乗り」。仕事では必ず前日に現地入りし、地元の鉄道をじっくり体験・観察してネタを練るそうだ。
「駅員さんや車掌さんのアナウンスをよく聴いて、ネタに生かしています。現地の職員さんのクセも覚えて、列車にも必ず乗って放送や走行音の特徴も把握するんですね。そのとき、いかにもマニア然としてレコーダーを掲げたりしないで、さりげなく音の風景を聴くことが大切。あくまで一般乗客として、その土地でどんな日常が展開されているかを体感するんです」
最近は「実況ナレーション」というネタも始めた。走行中の車内で本職さながらにアナウンスを再現してしゃべり続ける。マスクの下でひっそりと、アドリブ力が鍛えられるネタだ。
「テレビにもたくさん出させてもらった時期もありましたし、YouTubeやツイッターも動画が充実していますが、ネタ収集はやはり現場がいちばんです。だから芸人仲間の間では“前乗り芸人”で通っています」
このインタビューは埼玉県所沢市の、西武池袋線がすぐそばを走る露天のカフェで行ったが、ここも立川さんがアイデアを練る場所。列車のモーター音・ジョイント音・警笛や踏切の警報音・保線作業の音も聞こえてくるので本物の音をふんだんに聴ける環境にある。
「昼間から何時間も座っていることもありますが、人と同じことはしない。これも芸人としてここまでやってこられた一因でしょうね」
現場での反応を楽しむのは『そっくり館キサラ』でのものまねショーでも同じだ。「秋田から来たお客さんがいれば秋田新幹線のネタをやりますし、大阪からのお客さんには阪急電車や大阪メトロのネタも披露できますし、東京の首都高速道路情報のアナウンサーのものまねもできるんです」とレパートリーは広い。北海道から九州まで、ご当地ネタを披露するたびに全国の観客を沸かせている。